問題児たちが異世界から来るそうですよ? YES! ウサギが呼びました! / 竜ノ湖太郎

「ギフトゲーム」と呼ばれる闘いのルールに支配される箱庭の世界。旗も名も失い、消滅寸前となった弱小コミュニティが一縷の望みをかけて異世界から召喚したのは、破格のギフトを持ちながら札付きの問題児な3人で……という物語。
こちらの世界に非日常の存在が呼び出されるではなくて、こちらの世界から異世界へと召喚されるというお話で、呼び出された3人の少年少女は呼び出した黒ウサギも手を焼くような問題児。ただ、箱庭世界のパワーバランスをひっくり返すような超異能を持つ子たちばかり。日常側の存在が特別な異能持ちで、非日常側が呼び出した方というちょっとねじれた構造が、どっち側にたって読めばいいのか迷わせるところがあって最初は少しとっつき辛いところもあったのですが、ネットゲーム的な世界観を考えると弱小ギルドに破格のプレイヤーが呼び出されて一騎当千する話、と読めばいいのかと思ったり。
ゲーム的なルールの縛る世界は神話からのモチーフが組み込まれつつも、古今東西のあれやこれを割と自由になんでも投げ込めるような感じで面白いです。ただ、設定にしてもキャラクターやストーリーについてもそうなのですが、少し説明下手というか説明不足というか、読んでいてぎこちない感じがして、すんなりとこの世界に入り込めないところがあるのが残念な感じも。ただ、この辺のこなれなさと、飛び抜けた能力を持つ助っ人たちが逆境を吹き飛ばしていく勢いが合わさって、新人作品らしい荒削りな魅力ともとれます。いかんともしがたい状況のコミュニティを、チートかよおいと思うような圧倒的な力で跳ねのける構図にはやっぱりカタルシスがあるなと思った一冊でした。