なれる!SE 6 楽々実践?サイドビジネス / 夏海公司

なれる!SE (6) 楽々実践?サイドビジネス (電撃文庫)

なれる!SE (6) 楽々実践?サイドビジネス (電撃文庫)

読み始めるまでに心を整える必要があるためついつい積んでしまうシリーズなのですが、読み始めるとやっぱり面白く、そして心が痛いです。
この巻は短編集ということで、工兵がサイドビジネスに手を出して失敗する話や、サブキャラたちにスポットを当てた話の5編からなる一冊。売り文句ばかり立派な新型ルータにうっかり引っかかる工兵とか、なんだか薄ら笑いを浮かべるようなSE的エピソードもありつつ、このシリーズが私にとって面白く読めるのは、多分そういうネタも含めた同世代感なんだろうなと思ったり。
主人公の世代が新卒社会人なので、テーマが「ゼミ時代の同期に頼まれて副業に手を出す」だの「結婚式のスピーチ」だの「お酒を呑んでの失敗談」だの「就活と面接の話」だの、なんというか完全に若手社会人ロックオンなネタのオンパレード。自分自身に経験がなくても、聞いた話や見た話でのあるある感と、ラノベっぽさのあるキャラクターのバランスが嘘すぎず本当過ぎずで素晴らしいと思います。中高生が読んで楽しいのかは疑問が残りますが、少し上の世代向けのライトノベルという感じ。
話の中ではサイドビジネスに手を出す話が良かったです。工兵に無線LAN構築を依頼するゼミの女の子の、技術素人+厚かましさの合わせ技の腹の立つこと。だからこそああよく知りもせずそう言われるとカチンとくるよねっていう部分と典型的な悪い女っぷりに振り回される工兵を救う、室見さんの豪腕ぶりが実に爽快でした。かっこよすぎて惚れる。でもこの爽快さは、本当にシステム系の仕事やったことある人にしかわからないんじゃないかという気も……。なんでもかんでもできるとか夢見てるんじゃねーよ、できることとできないことのちょっとずつの積み上げなんだよこの野郎、みたいな。そして室見さんにとって、工兵がどれだけ大きな存在になっているのかが分かるエピソードで、にやにやできる部分もあったり。
そして酒豪と言うよりは完全に酒乱な梢さんは、お酒、頑張って控えようね……。