煉獄姫 第五幕 / 藤原祐

煉獄姫 五幕 (電撃文庫)

煉獄姫 五幕 (電撃文庫)

ここまでの4巻で積み上げてきたキャラクターの性格が、キャラクター同士の関係が、そしてその企みが、匍都への幻獣襲来とともに一気に動き出して俄然面白くなりました。
戦場と化す匍都を舞台に、視点を次々と変えながら同時多発的に起きる闘いを描いていく形になるのですが、その中でもキリエvsグイードが好きです。私の個人的な好みとして自傷による能力の発動というのがあるのですが、そのある週極まった形としての自己増殖という力を元にした自分自身を使い捨てにして発動する高等術式とか悪趣味で素晴らしいと思うのです。あと人でなしのくせに何気なくツンデレ気味の良い子なところを見せるのが、同じ作者のレジンキャストミルクで蜜が好きだった身としてはとてもツボ。こういう役回りのキャラクターは好きです。
その他にも色々と事件が起きるのですが、どれもこれも爽やかに悪趣味に容赦無い展開が続くのはさすがの藤原祐という感じ。無差別に容赦がないというのではなくて、甘いところは甘いのにピンポイントでひたすらに性格の悪い展開に持ち込む辺りがもう。ニーナやトリエラ、そしてキアスと一巻に立て続けにここまで来るかと思いました。
そして結実するユヴィオールのある計画によって、訪れるのは圧倒的な苦境。もうどうしようもなくバッドエンドの予感しかしない、今更取り返しのつかなくなったような状況の中で、フォグやアルトたちがどう闘っていくのか、最終巻になるという次の巻を楽しみに待っていたいと思います。