ささみさん@がんばらない 8 / 日日日

ささみさん@がんばらない 8 (ガガガ文庫)

ささみさん@がんばらない 8 (ガガガ文庫)

がんばっても、意味なんてないのかもしれない。
無力なわたしがどれだけ足掻いても、世界には波風すらも立たないのだろう。
意味もなく無理をして、失調して、倒れて――周囲に迷惑をかけるだけで。
それでも、わたしはもう、何もせずに引きこもっているのはやめたんだ。

ギリシア、インド、クトゥルー神話ときて今度は科学神話と宇宙人というまた斜め上な題材でやってきたささみさん最新刊。と言っても、相変わらずの飛んだネタを盛り込みながらも本筋は着実に最終決戦に向かっているような感じの一冊でした。
宇宙人目撃談にラスボスと化した日留女に対して世界の神話が取る対応策、そこかしこに残される首領の罠。これまで無秩序に広げてきたかのような設定と、スーパー神話大戦と化した多数キャラクターたちに、ここに来てまた新たなネタを加ええつつも、それを巧いこと使ってなんでもあり展開ながら本筋を外さない物語を作っていくあたりは流石と思います。ただ、さすがに話が非常に入り組んできていて、相変わらず語り口がトリッキーなこともあって、かなり厚いながら状況の整理と方向付けに大部分費やされた一冊だったなという印象はあったりも。
そして整理されたあとに来るのは、どんなに話のスケールが大きくなったってささみさんのお話であるところが好きです。一緒にいて助けてくれる人たち、友だち、そして新しくできた守るべき存在、妹のるるな。そんな人たちに囲まれて、これまでただ巻き込まれてがんばらざるをえない状況で死にそうになりながら戦ってきたささみさんが自分からがんばろうとする、物語のターニングポイント的なお話。
都合の良すぎる安寧を振りきって、皆が幸せになどなれないどうしようもない世界を、絶望しちゃいそうなくらい大きすぎるちからに翻弄される残酷な日々を、逃げないで、がんばろうと決めたこと。それは呆れるくらい不器用で、笑っちゃうくらい身勝手で、でもそれを生きることだというのなら、どんなに傷ついたって闘い続けるしかないのだろうと。終わりに向かう世界の中で、身近にいる愛すべき人たちとともに、そうやって生きると決めた彼女に、そっとがんばってと言ってあげたくなりました。それにしても、こういう話が私は本当に好きすぎるなあと。
まさにラスボスな最後の引きに、利用されているだけだと思ったら以外な登場を果たしたある存在のこともあり、続きが楽しみになる一冊。やっぱり、好きなシリーズだなと思います。