ネバー×エンド×ロール 〜廻る未来の記憶〜 / 本田壱成

ネバー×エンド×ロール―巡る未来の記憶 (メディアワークス文庫)

ネバー×エンド×ロール―巡る未来の記憶 (メディアワークス文庫)

天災からの復興、壁に囲われた札幌、恒常都市計画。そんな街で壁の向こう側に憧れる少年と、彼の友人である天才肌の少年と幼馴染の少女。そんな彼らの前に突然現れたのは、時を駈ける少女で、というお話。
高い高い壁に囲われた街の中で外へ出たいと想う少年と、過去に向かって時を駆けていく少女のボーイミーツガールとして始まった物語は、章が変わるごとに時代を先へと進め、少年たちにとってのこれから、そして少女にとってのこれまでが描かれていきます。その少女、こよみと出会ったことが彼らのその後をどのように変えたのか、そしてそんな彼らに影響を与えたこよみが、一体何を胸に抱いて彼らの前に現れたのか。時間軸を先に進む流れと、それを唯一遡る流れが交わって、原因と結果が同時に未来に現れていくような感覚が不思議な物語でした。
そして、未来に進むに連れて明らかになる壁に囲われた都市、札幌の目指していた姿。そして世界の謎。天才少年だった勇夢の作っていたものから繋がるアンドロイドの誕生と、彼女が見守って伝えようとしたもの。全ての因果が、未来の行き止まりで、一人の少女によって反転して、また逆の方向に続いていく、そんな構図がなんだかとても素敵だなと思います。
爽やかというよりも透明感があると表現したほうが良さそうな雰囲気も良かったのですが、あまりにも鈍感な2029年の駆や、どこかあっさりとして見える3367年のこよみの決意といったところでちょっと違和感や物足りなさを感じたりする部分も。さらさらとした読み心地が、生っぽい感情をあまり印象に残させないのかもしれないかなと思ったり。その分アンドロイドである彼女の語りはとても良かったですが。
そして驚かされたのはエピローグとなるエピソード。タイトルの指し示した意味。終わらないロール、続くエンドロール。そしてここまで描かれてきた世界がどういうものであったのか。一つの構造として対象化されるそれは確かにそれ自体が儚く美しいもののように感じつつも、だとしたらこの物語を私はどう消化したらいいのか分からなくなるような、突然宙に放り出されるような終わり方でもありました。