ひとりぼっちの地球侵略 1 / 小川麻衣子

ひとりぼっちの地球侵略 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

ひとりぼっちの地球侵略 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

高校に入学した広瀬岬一の前に現れ、彼を追い回す仮面姿の謎の少女。その少女大鳥希は自分を地球を侵略しに来た宇宙人だと名乗り、岬一に一緒に地球を侵略しようと言って、というお話。
侵略者といっても末端の戦闘兵として一人で地球に送られ、征服はしても地球人を害そうという意志はない。そんな彼女が人知れず続けてきた他の星の侵略者との闘いにある理由から岬一は巻き込まれていく、というと王道の日常から非日常に引きこまれていく系バトルものなのですが、読んでいての感覚はそういった作品とは全く別のもの。
大きな背景とかバトルとかそういったものは全然主眼ではなくて、描かれるのはたった一人きりだったエキセントリックな少女と、素直で真っ直ぐな少年の出会いの物語。そして、このボーイミーツガールが本当に素晴らしいものでした。力はなくとも自分なりに考えてその方向に真っ直ぐに走っていける少年と、長い間重いものを背負って一人で生きてきた少女。誰かが隣にいる、そんなありきたりの幸せを、瑞々しくこんなにも素敵なものとして描いて、少女のどこかズレてでも飾らずに歓びを表現するところ、少年の初々しさ、不器用な二人の交流にやられました。
そしてそういう日常があるからこそ、差し込まれたその日常の裏側の彼女の闘いの異物感が際立って、でもそれが今までの彼女の当たり前だったと分かって、けれど今は彼がいる。こんなに強くて弱くて、不器用で一生懸命な二人のこの先に幸あれと優しい気分になれるような一冊でした。これは、すごく好き。