2 / 野崎まど

2 (メディアワークス文庫)

2 (メディアワークス文庫)

今までの野崎まどの集大成にして、読み終えても野崎まどだったとしか言い様のない作品でした。
これまで出した作品のキャラクターをオールスター出演させつつ、主題となるのは天才・最原最早その人。つまりこれは[映]アムリタの実質的な続編でもあって、そして野崎まどという作家のこれまで書いてきたものの総ざらいのような。
もう何を書いてもネタバレになるので、内容にはあまり触れませんが、野崎まどをここまで読んできた人であれば間違い無く楽しめる一冊でした。読んでいない人は、とりあえず既刊、せめてアムリタだけは読んだほうがいいかなと。遺伝に創作を絡めたSF的な要素、これが推理できるのかは置いておいてもミステリ的な要素、そして天才にして奇人な女性と映画を作るというキャラクター小説要素が渾然一体と交じり合って、出来上がったのは野崎まど作品としか表現できないもの。そしてそういったパーツで見てもなかなかに面白くリーダビリティも高いので、なるほどイチャイチャしながら映画を作る小説というのもあながち間違ってはいないんじゃないかとも。
けれど最原最早。死なない生徒、究極の小説のようなイデア的なもの、極端な概念を導入して物語を作るのが野崎まど作品の特徴だとしたら、この規格外の天才はまさにそういう極端さの行き止まりのようなもの。常識的に積み上げたはずのものをあっという間に突き崩す、創作の極点のような存在は、理解の範疇を超えてホラー的にゾッとさせてくれるものすらあります。この『2』という作品は、その彼女のことを、過去作すら全て下敷きとして描いた560ページでした。
この作品をもって過去作品の持っていた意味さえも変質させてしまうような構成は非常に面白かったのですが、ここまでやるのであればもっと凄いものが見れたのではないかという想いもあったり。でもそれは、この先の野崎まど作品できっと読むことができるんじゃないかと、そういう期待を抱かさせてくれるような一冊でした。怪作、だと思います。