オカルトリック 02 / 大間九郎

オカルトリック 02 (このライトノベルがすごい! 文庫)

オカルトリック 02 (このライトノベルがすごい! 文庫)

読み終わって、何だこれすげえ、としか言葉が出ないような一冊でした。
目を覚ました吉備津舞花の神隠し、その事件の調査に乗り出した玉藻とイソラというストーリーはあって、その事件の謎は物語の本質にしっかり絡んでいて、またしっかりと謎解きも行われるのですが、それ以上に「愛だったな、愛」と言うより他ない物語。現と夢を行ったり来たりして、文体もテンションも乱高下を繰り返し、あと一歩で破綻しそうな物語はそれなのにきっちりと一つの線で結ばれて、そしてそこにあるのは愛、みたいな。
私がいてあなたがいるということ、手を伸ばして握り返すということ、許し許され、支え救われ、一緒にいるということ。二人だから生きていけるということ、そこにあるもの。それは特殊な環境で、特殊な登場人物が、極端な形で見せるもので、それでも本質は変わらない、むしろだからこその本質なのかなと、そう思わせるだけの力のあるもの。
正直なところ作者の文体や極端さは苦手なところが多くて、この作品も途中までは読むのに少し苦労したのですが、中盤からはもうなんというかそれどころじゃないような感じがありました。
そしてこれはぼくとねえさんの愛のお話であって、また今世紀最強のメンヘラであるイソラさんの愛の物語でもあったのだなと。ラストはもう、それしか無いとしても思わず鳥肌が立つような愛の形でありました。薄々感づいてはいたけれど、実際起きてみると言葉を失った、ような。
そんな感じの、とりあえず読んでみようとしか言えない一冊。なんとなく、このラノ文庫から出た本ではありますが、もっと広く普段ライトノベルを読まないようない人のところまで届いたら面白いんじゃないかと、そんなふうに思ったりもします。そのくらい、遠くまで跳んでいる物語なんじゃないかな、と。