バカとテストと召喚獣 10.5 / 井上堅二

バカとテストと召喚獣10.5 (ファミ通文庫)

バカとテストと召喚獣10.5 (ファミ通文庫)

いつものバカテス短編集、と見せかけつつそろそろ突き抜けてしまうんじゃないかという暴走ぶりを見せてくれる一冊でした。思い返すと暴走自体は結構前からしている気もしますが……。
まさかの表紙に現れた玉野さんも大活躍な中編「僕と雄二と危ない黒魔術」は人格入れ替わりネタですが、いろいろ入れ替わり過ぎでなにがなんだかわからないけれどテンションは常にMAX! な感じが楽しい話。相変わらず性別に対してオープンな彼ら彼女らがどこに向かっているのかいまいちよく分かりませんが、さしあたり美波の体に明久が入るといつもよりもずっと女の子らしくなるという事実だけは理解できました。やったねアキちゃん! しかしこの作品のキャラクター、誰も彼も誰かから一歩間違えばストーカーな迫り方をされている、ような……。
それから小学生時代の明久と姫路さんを描いた「私とウサギと仄かな初恋」は、明久の全盛期の言葉に偽りなしの、スーパー明久が見られる短編。体が弱くて後ろ向きでクラスでもちょっと居場所のなかった姫路さんに、明久が向けた優しさとカッコよさったらそれはもう王子様もいいところで惚れるよねこれはという感じ。しかしなぜこの明久があんなバカに……と思いつつ、根っこの部分は変わっていいからこその明久のモテっぷりかとも思います。そして姫路母が何気なくいいキャラしているというか、この作品にはブレーキをかける人はいないのかと思ったり。
そんな感じで相変わらず楽しかった短編集。キャラクターの暴走もかなり極まってきた感じがあるので、次の巻で本編はラストというのもいい区切りなのかなとは思いつつ、短編集も含めればきっともう少し読めるであろうバカテスワールドを楽しみに待っていたいと思います。