謎解きはディナーのあとで / 東川篤哉

謎解きはディナーのあとで (小学館文庫)

謎解きはディナーのあとで (小学館文庫)

大ヒットしていて気になっていたところに文庫落ちしたので!
国立署の刑事にして、実は一大企業グループ「宝生グループ」のお嬢様である宝生麗子が持ち帰った事件を、毒舌執事な影山が麗子からの話を聞いて解決するという安楽椅子探偵なミステリ連作もの。
この一冊の中で6篇の話が入っているのですが、とにかく安定感抜群という印象でした。麗子が立ち会った事件があり、上司の風祭警部(この人の御曹司)がトンチンカンな推理をして、麗子も真相が分からず持ち帰ると影山が話を聞いて、執事的にいいのかと思うような暴言を吐いてそこから解決編という確立された流れ。主眼はあくまでもパズル的な謎解きであって、キャラクターにもそこにあるドラマにも決して深くは立ち入らない線引の明確さと、読んでいて一巻目なのに長期シリーズのような安心感があります。その辺なるほどドラマ向きだなと思ったり。
話的には、あくまでも状況やストーリーはパズルの添え物的な位置づけで、個人的にはドラマ部分が好きな私としてはちょっと物足りないものも。あくまでも謎解きでお話は終わって、解決後のあれこれはばっさりと切っられていますし、友人が刺されたのにそれはさすがにあっさりし過ぎじゃないですか! みたいなものもあったり。
面白かったのは、麗子と影山の掛け合いの部分。私はお嬢様で優秀なキャリアウーマン! と主張している割にアホの子とは言わないまでも(風祭警部は間違い無くアホの子)色々とうかつな感じの麗子と、執事のくせに主人に暴言を吐いたり、かと思えば意外と押され弱かったりする影山。なんやかんやと言いつつもこの二人がいいコンビに見えてくるのが良い感じです。そして麗子のお嬢様お嬢様言いつつ、変に庶民感覚のあるキャラクターは絶妙だなあと。
そんな二人の掛け合いのキレも話を重ねるごとにどんどん良くなっていきますし、恋愛要素はないのだけれどそういう関係を妄想する余地がばっちりある辺りもとても良いと思う一冊でした。ここがくっつくのはなんか違うな……いやでも……みたいな!