魔法少女育成計画 restart (後) (このライトノベルがすごい! 文庫)
- 作者: 遠藤浅蜊,マルイノ
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2012/12/10
- メディア: 文庫
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とにもかくにも細かく手の行き届いた悪趣味さが素敵な作品。冒頭の再掲かとおもいきやとんでもないことがさらっと書かれたゲーム説明からひどいのですが、明らかになっていくゲームマスターの素顔、そして適当さとその大元となるマスター自身の抱える歪み、そしてさらに巻き込まれた彼女らが「子共達」であることの意味。それでも協力すればクリア可能と思わせたゲームに対して、「記憶回復」と共に明らかにされる真実と進む度にキメ細やかなひどさに。そんなすべての要素が噛み合ってできあがるのは、もう本当にどうしようもない、救われない世界の姿。
それぞれの少女たちの抱えた物語には彼女たちの生きている姿を感じさせるのに、安っぽく在るべくして安っぽい死のゲームがその彼女たちの命をかけた奮闘すら安く見せてしまって、ただひたすらに空虚さばかりが残ります。それなのにこの死んでいくゲーム自体は読んでいて面白いし、キャラクターも魅力的というのがまた悪趣味で良いと思うのです。
キャラクター的には自らの目標のために弱者を装いひたすらに策略を巡らせ続けたプフレが好み。シャドウゲールとの関係性は、ちょっとしたボタンの掛け違いのような気持ちのすれ違い、けれどそれは生死をかけた場面では致命的な、まで含めて良かったです。あと、ディティック・ベルとラピス・ラズリーヌの話は、読んでいて思わずこの流れはあかんと言いたくなるような何かでもう……。
そんな感じに非常に面白かったです。コミカライズ決定ということですが、これは是非アニメで見たいなと思う一冊でした。
それにしても何もない物語。最後まで読んで少しだけ良かったと思えることはあるのですが、それにしても何一つ変わることはなく、意味を残させてもらえなかったという印象は拭えません。とすれば、魔法の国とか変わってしまった事自体が、彼女たちの不幸であり全てだったのかなと思わざるをえないような。彼女たちはもちろん、前作の生き残りであったスノーホワイトですら、こういうふうにしかなれないのだから。