下ネタという概念が存在しない退屈な世界 2 / 赤城大空

一発ネタと思わせてかなり本気だった1巻から、いろいろな意味で本当に大本気であることがよく分かった2巻でした。
前回の事件から続くSOXの下ネタテロ活動で生徒たちの間で正しい正知識が広まっていく中、活動を強める下着泥棒集団「群れた布地」。SOXに触発されたとするその動きにSOX。の代表であるペロリスト「雪原の青」が危機感を強める中、SOX。に入りたいという少女亀頭鼓修理が現れて、という物語が描くのは、革命が理念なき模倣をされることで崩されていくという至って真面目な話でこのギャップがもう。
自らの思い描く世界の変革ために動いている「SOX」とその場の己の欲望を満たすために動く「群れた布地」。SOXにタダ乗りする形でイメージを喰い潰す群れた布地との戦いを、下ネタテロリストとして暴れたいだけでけれど非常に能力は高い子どもである鼓修理を中心に据えて描くことで、理念なき闘争の危うさと「頭のいいバカ」のハマる罠を描いている、という真面目な分析が素でできちゃうのがなんというかもう。
結局SOXが描く世界はこのディストピアに対して今現在の私たちの世界のレベルでの倫理観を維持したものであって、群れた布地は私達の倫理観においても明確に犯罪行為を働いているわけで、それをこういう形の敵役にする配置もやっぱりバランス感覚として非常に優れているなと思ってしまうあたりがやっぱりもう。
と、そんな真面目なことを考えながら読んでいる作品の文字を追いかけると留まることを知らない下ネタの嵐なので、思わず神妙な顔つきになってしまうというものでもあります。1巻からさらに過激になっている先輩の下ネタ無双は、作者の頭の中身が心配になるレベルで垂れ流しが止まらずに、ちょっとこれは凄いというレベル。そもそも新キャラの女子中学生に亀頭鼓修理(おにがしら こすり)という名を与えた時点で大概アウトな気がしてなりませんが、学園で暗躍する轟力×奥間本を求める勢力といい、匂いフェチ極まる群れた布地といい、表紙でアウトと思っていたら表紙をめくると完全にアウトだったアンナ先輩といい、パワーアップし過ぎて怖いです。ただちょっとこれ以上は引く、というかこの時点でも若干引くので、巻を重ねるごとに過剰にしていくしか無いのかも知れませんが、この先はもう少し押さえ気味お願いしたいところでもあったり……。
あと、あとがきで触れられていることでもありますが、内容が詰め込み過ぎでちょっとごちゃごちゃしているような感じは受けました。色々と事情はあるのだとは思いますが、これだけの中身を詰め込むのだったら、話自体を二巻に分けても良かったのじゃないかな、という。
そんな感じの物語は、群れた布地事件のクライマックスを迎え、そして大ボスの存在もまた露わに。やっぱりというかなんというか、エロを表面に押し出しつつ表現規制自体に踏み込もうとするこの物語が、色々な意味できわどい領域に一体どこまで突っ込んでいくのか、期待半分不安半分に続刊を待っていたいと思います。