安達としまむら / 入間人間

安達としまむら (電撃文庫)

安達としまむら (電撃文庫)

あとがきに「ゆ○○○」みたいなのを書いてくれと言われて書いたとあって、さらに参考にしたマンガを一文字間違えたかもしれないと書かれているのですが、この作品を紹介するにはまさにそういうのが的確かと思う一冊でした。ちなみに、「○る○○」ではなくて「○り○○」だと思われます。
そんな訳で学校の授業をサボっている時に体育館の二階で出会った二人の少女の物語。授業をサボっていることだけが共通点で、お互いのことは外に何も知れないけれどなんだか一緒に卓球をしてみたりして、そんな二人の距離が縮まったり、縮まらなかったり、なんだかそんな日々。ドライな関係を心地良く思いながら、手探りにお互いのプライベートに踏み込んでいく感じのこそばゆさったらありません。
しまむらの方はまだ友だちとしての安達を見ているのですが、安達に視点が変わった瞬間からの、どうもただの友だちではない感覚の持ち方とか、他に友達がいないがゆえのしまむらの友人への嫉妬心とか、しまむらへの甘えっぷりとかなんというかもう! もう! みたいな。
この友達以上恋人未満な二人の少女の物語を描くのはいつもの日常系入間人間なのですが、この圧倒的何も起こらなさとその中で揺れる微妙な心情とか感覚とか、空気感みたいなものを描くのやっぱり凄く上手いなあと思いました。だからどうしたといってしまえばそれまでなのですが、なんかちょっといい話でいい百合だったように思います。最後の二人の関係の落とし所がまた!
ちなみに入間ワールドなので電波女のヤシロさんが登場しますが、宇宙人っぷりが世界観的に相変わらず浮いていてちょっとどうなのかと思わなくもなく。