バカとテストと召喚獣 11 / 井上堅二

「アイツが本気で考えた作戦なら、今先輩がこうして立っていることはありえませんよ」

Aクラスとの勝負に水をさされる形で2年×3年の学年対抗戦へと流れこむバカテスラストエピソードの前編。普段のFクラスの闘いではなく2年生全体としての闘いということで、意思決定は各クラス代表の合議制がしかれることになり、根本の存在もあってイニシアチブを取れない雄二、そしてすべてを一手に引き受けることになった翔子の指揮のもと拮抗しているかにみえた戦線は……という話なのですが、これがまたフラストレーションの溜まる展開。
Fクラスというか雄二が雄二らしい作戦を取れない以上、普通の戦略で闘うしか無い、しかも他クラスと協力しながらという状況が破天荒な作戦で活路を開いてきたFクラスを縛り、雄二は合議制の壁の前に発言権すらまともに得られない状態。意見がまとまらずに会議が踊ったり一人の反対派の存在で押さえ込まれたりと、これがまた大規模組織の息苦しさが無駄にリアルに描かれているというか、色々思い当たることが多くてなんとも。そして指揮官がそういう状況であれば兵隊もそれに準じた働きしかできない訳で。そこに加えて、良い人なんだけどコミュニケーションが成立しない高城先輩のウザ面倒くささも留まるところを知らずに、読んでいると割とイライラとする話ではありました。
ただ、だからこそその雄二の状況を突破するきっかけを与えたのが明久だということが、そして明久の雄二への絶対の信頼が胸を熱くするものがあるのですが。お互い罵り合って喧嘩してバカなことばかりしてきているFクラスの面々、特に雄二と明久。そんな二人の間にある特別な信頼関係。それが明久にそういう啖呵を切らせて、雄二にいつもの自分を取り戻させるのであれば、読んでいる方にもああこれがFクラスだ、タダで負けるはずがないじゃないかと思わせてくれる訳で。
兎にも角にも絶体絶命の状況から反撃の狼煙が上がって後編へ。この勝負の決着、そして引き伸ばしにされてきた恋愛関係の決着。バカテスという物語のラストまで楽しみにしていたいと思います。