四月は君の嘘 2〜6 / 新川直司

ピアノの音を失ったピアニストの少年と自由奔放なヴァイオリニストの少女の出会いから始まる物語は、少年が囚われ続けた過去を、母親という存在を乗り越えるための、コンクールへの再挑戦という舞台へと。
演奏家の持つ激しさと彼らの身を置く闘いと等身大の少年少女の恋と青春の模様が、透明感のある絵で描かれていて本当に素晴らしいシリーズだと思います。折り重ねられた感情の弾けるような演奏シーンは、音の聞こえないマンガという媒体なのにここまで心に響くものかと驚くくらいで。それはもちろん絵や演出の素晴らしさがあるのですが、個人的にはとにかく言葉の響きの綺麗な作品だと思うのです。短いフレーズに彼ら彼女らの想いを込めて、詠うように紡がれる言葉が、この作品に読者の感情を揺り動かすような流れを作っていて、それが本当に素晴らしいと思います。激しさ、切なさ、苦しさ、期待、希望、楽しさ、そういったものを全てこめられたような流れに、読んでいて思わず嬉しくなったり、泣きそうになったりできる、そういう素敵なマンガだと思います。そして、そうやって描かるすべてのキャラクターたちにそれぞれの物語があるというのがまた。
話的には有馬がもう一度ピアノと向き合うことを決めた、その理由となった宮園という少女がいて、ただ、彼女に全てを依るような形で立ち上がった彼がこれからどうなっていくのか。そして二人だけが音楽家の世界にいて、けれど彼らを取り巻く環境には有馬に思いを寄せる幼馴染や、宮園が思いを寄せる有馬の友人がいてという恋模様にも期待。
そして、今が幸せで、でもこのままでいられないという言葉が、何らかの病を抱えている様に見える、きっと敢えて今しか見ていないように思える少女にとってどれだけ重いものなのか、6巻の出来事を読んだ後だと何よりも気になります。