安達としまむら 2 / 入間人間

1巻を読んだ時はゆりゆりしてるなあいいなあとは思いつつも、そこまで好きという訳でもない作品で、2巻が出るといってもあの続きをどうするのだろうと思っていたりもしたのですが。
……いや! これは! すごいというかヤバいというか! なにこの破壊力!!
話自体は何も特別なことなんて起こらなくて、冬になって安達がしまむらをクリスマスデートに誘おうとしてもやもやしたり悩んだり浮いたり沈んだりしながら当日を迎えたりするだけなんですが、これが本当にもう、外で読んでいたらにやにやして不審者になりかねないくらいの破壊力で危険です。もはや思わず壁に投げつけそうになる勢い。
入間人間は何も起きなくても記憶を呼び起こさせるようなちょっとした空気とか、感情の動きとか、そういう手触りみたいなものを描くのが抜群にうまい作家だというのは前々から思っていたのですが、それが百合という一点にすべて注ぎ込まれているからさあ大変、みたいな。
すっかりしまむらに懐いている安達の煩悶と、それを適度にいなしながらちょっと悩むしまむらという二人の関係に、女同士のクリスマスデートというちょっとした爆弾が投げ込まれている形なのですが、交互に描かれる二人の心情がなんというかもう。大型犬が初めての人間に思いっきり懐いちゃって親愛なんだか恋なんだかわからなくなってるみたいな安達と、それを可愛がりながら適度な距離は保とうとするしまむら。二人の関係は壊したくなくて、でも一歩踏み込もうとするところもあって。
安達に対するしまむらの好きだけどちょっと引いてるけどでも流されてるみたいな態度と言葉の選び方に妙なリアルさがあって変な声が出そうになります。これくらいなら変じゃないと思おうとする安達と、安達を妹みたいなものだと思おうとしているしまむらと、でも結局クリスマスにはカップルだらけの街のなかでデートする二人、みたいなこの。
そして最後のしまむらのことをどう思っているのか煩悶する安達の話の破壊力が馬鹿みたいに高くてこれはもう。二人の関係はちょっとした若気のあれやこれやというか、世界が広がれば普通に解消されていくような何かだとは思うのですが、しまむらしか見えない世界にいる安達のつんのめりかたと依存具合に何かちょっと深淵が見えるような気がしなくもなくて、ゆるゆる日常の中に覗くそういうものにもハラハラする一冊でした。
うん、これは、すごかった。