3月のライオン 9 / 羽海野チカ

3月のライオンは読むのに気合が必要なので毎回しばらく積んでしまうのですが、読めばやっぱり打ちのめされるくらいに凄い作品だなあと思います。読み始めた途端に号泣、読み終えた後は思わず溜息、みたいな。それは当然気力も必要になるわけですが。
「家族の第9巻」と帯に謳われた通りに、あの出来事を受けての、ひなを中心にした川本家の家族たちの話。どんなに酷くてもいつまでも止まない雨はなくて、けれど雨が降ったという事実は決して変わることはなく残り続ける。そしてそれでも、人は生き続けなければならない。この辺りの話には、なし崩し的に流してしまったり、良い話で終わらせてしまったりせずに、起きたことに向き合う作品としての力を本当に強く感じました。壊してしまうのも人であれば、温かい手を差し伸べられるのもまた人であって。決して戻らない、そして止まらない時のなかで人々は生きていく。その時に、一番近くにいるのが家族なんだなと、そう思わせてくれる川本家が、本当に素敵に思えて。
この作品はすごく真摯というか、逃げないマンガなのだと思います。棋士を描くときには、彼らが盤上にかけているものに対して。そしてそれ以外の人を描くときには、多分、生きるということに対して。馬鹿正直なくらいのそれが、この作品の魅力であり、強さであり、私たちはそれに打ちのめされたり、救われたりするのだろうと、改めて思いました。