東京レイヴンズ 3〜5 / あざの耕平

発売時に2巻までは追いかけていたのですが、そこで止まっていたレイヴンズ。今クールから始まったアニメの出来が凄く良かったのでいそいそと続きを読み始めました。
元々2巻で止まっていた理由が、ここに描かれる少年少女たちの物語がとても正統派で出来が良くて、それが逆に私が読んでもなあという気持ちになる部分があったから(正しく少年少女のための小説だと思った)なのですが、3巻で大人たちが活躍しだしたらそんな事を言っている場合ではなく。良いじゃないですかこの公務員たちの熱い闘い、みたいな。そして大人たちが描かれるから、それに対して子どもたちの頑張りも映えるというのが良いです。冬児の能力は、設定が出た瞬間に多分そういう方向だろうと思う物ドンピシャだったのですが、それでもそこで春虎が行ったからこそのものがいいよなあと。
そして4巻5巻に入ると鈴鹿様カムバックに短篇集の変則構成。短篇集の方は、想定外の事態にひたすら弱い夏目のポンコツっぷりの際立つ内容。なまじ天才とうたわれるまでの才能があるだけに、それをちゃんと生かせていない感じが残念さを上塗りしていくような感じです。今後の成長に期待、的な。
そして鈴鹿様はこちらはこちらで難儀な子。普通ではない出自から高い能力に精神面が追いついていないというのは作中でも語られるとおりに夏目とよく似ているのですが、こちらはそれを覆い隠すようにひたすら女王様基質で口を開けば罵詈雑言みたいなタイプ。それだけならラノベ的によくあるツンデレヒロインの系譜なのですが、この子、そのメッキすらひたすら脆いのです。そしてちょっと動揺するとすぐ剥げるメッキの下が、完全に小学生かお前はみたいな状態なので夏目よりもさらにアンバランス感が際立って、これはこれで可愛いなあと。
そしてそんな夏目と鈴鹿が春虎に向ける好意、その鈍感バカ虎がいつまでも見ているのは北斗(=夏目)の方というこの恋愛模様もまた。
というか鈴鹿様の

「あいつ……ズルいよ。嫌いだ。あんなの……」

の破壊力ったらない。
そんな感じで5巻まで。5巻ラストにかけて、1ページめくるごとにすごい勢いで次の展開への仕込みがされていくというなかなか凄まじいものを読んだので、これは絶対に面白いだろうと、評判の良い6巻に期待が高まります。