東京レイヴンズ 6〜9 / あざの耕平

[asin:4829138092:detail]すごく面白かった!!
6巻で初めて分かる、陰陽師同士の戦いの凄み。お互いの技に意図があり、お互いの言葉に意味があり、お互いの考えを読み合う最高峰の闘いに、今まで読んでき闘いが未熟が故に力任せの押し合いになっていたことと、陰陽術の奥深さを見せつけられて。
そして、7巻から明らかに物語のギアが変わります。ここまでに描かれてきたもの、多くのキャラクターたちの存在、行動、その全てが初めはバラバラに、けれどひとつの方向に向かって動き始める。その中心にいるのは春虎と夏目たちではあるのですが、脇を彩るどころか圧倒的な存在感で物語を飾る大人たちの姿。明らかにされる秘密とともに揺れる少年少女たちの気持ちと関係。そして動き始める大きな闇。
ここに来るまでに語られてきたことは確かに明示されていた嘘はあっても、決して間違ったことはなかった。読んでいる時には、「そういうもの」だと思っていたし、思わされていた。そこには何も違和感はなかったはずで。なのに9巻まで読み終えた今、それは全く別の意味を持ったものとして、まるで初めからそうであった、そうであるのが自然で当たり前だったかのようにして存在している。
一つのものに何重もの意味があって、大きな秘密を隠すためのあからさますぎる嘘があって。ミステリではないのでそれを推理するような読み方ができるわけではないのですが、それにしたってこの構成は凄いです。言葉によって相手を呪う、それを乙種呪術と作中で呼んでいるわけですが、それでいけばあざの耕平という人は大した陰陽師であるとしか言いようがありません。もちろん、呪われていたのは読者である私な訳ですが。
そんな訳でこのシリーズ、本当に言葉の一つ一つの使い方、意味のもたせ方、読者への意識付けが上手いと思います。逆に言うと、今アニメが放送中なわけですが、これを言葉ではなく映像で表現するのは大変な仕事だろうと思ってしまったりもするのですが。
そんなことは抜きにしても、細かいことを書くとネタバレになるので書けないのですが、まさに第一部クライマックスの名にふさわしく素晴らしい盛り上がりでした。キャラクターがこれだけ増えながらも全員にそれぞれの貫く想いと見せ場があるというのも良いです。そしてそのまま雪崩れ込むように第二部へと。これは続きも楽しみ。個人的には仲間を得たことで立ち向かう覚悟をした鈴鹿のこの前に期待をさせてもらいたいなと!