東京レイヴンズ lost-girl with cat / あざの耕平

アニメブルーレイ1巻特典となる大蓮寺鈴鹿の前日譚。私はほぼこの特典のためにブルーレイを買ったのですが、それでも鈴鹿ファンなら必読な作品になっていたと思います。
大連寺鈴鹿という少女は、歳相応にすら届かないくらい幼い人格と大きすぎる才能を持って、ただそれすらも父親である大蓮寺至道の引き起こした霊災という因果に絡められたような、どうしようもない行き止まりの少女であって、そんな彼女にとって唯一の救いであった兄を蘇らせるために、陰陽師としての道を歩き出すのですが。
春虎たちに出会って事件の中心にいた時の彼女、そしてその後陰陽塾に入ってきてからの彼女。それを見ていれば、この話はおおよそ想像がつくもので、けれど想像がついていただけに切ないです。それが道を踏み外す事だと分かっていても、その道を走らなければならないと自らを追い詰めたこと。それができてしまう、父親至道の実験でもたらされた陰陽道の才能。そのために作られた強さで囲いを作ったような性格と、その裏側にある子供っぽい弱さに脆さ。自暴自棄になった子供の暴走というにはあまりにも強い力を持ちすぎて、そして彼女はあまりにも多くの不幸を背負いすぎて。
そんな彼女の最後の拠り所であった式神のソハヤ。彼女に手を差し述べようとした「子供に甘い」天海大善。心から嫌であったようにはどうしても見えない環境を捨てて、彼らの伸ばした手を振り払って、崖から身を投げるように踏み入れた領域があの1巻の事件であるならば、彼女にとってその後の春虎の存在が、陰陽塾での生活がどれほど特別だったのだろうと思う話でした。そこでも何か不憫なのが鈴鹿様の鈴鹿様たる所以ではありますが。
そして、なんとか鈴鹿を救おうとした天海が確信したのがあのセキュリティの一件で、それがラストでの呪捜部の動きにつながっているのならば、大人として最大限誠実に正しいことをしたこの人の行動も、またなんて苦いものなのだろうと思います。それもまた、清濁併せ呑む彼の進む道なのだとしても、この爺様が子供に甘い大人であるのなら尚更に。