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千年万年りんごの子 3 / 田中相

千年万年りんごの子(3)<完> (KCx)

千年万年りんごの子(3)<完> (KCx)

りんごの村、おぼすな様、メタテ。非科学的だからどうとかそういう話ではなく、村を取り巻く伝統は伝統としてあり、それはその世界がそのようになっているから。それは神であって、あるいは自然そのものの姿であって。その中心にいて、妻である朝日を奪われようとしている雪之丞が何をするのか、という最終巻。
すごく上質で、けれど簡単ではない物語を読んだような気がします。このなめらかな話は単純に分解して理解に落とし込めるものでもないというような。ただ、大きなもの、大いなるものはただそのようにしてそこにあって、だからそのようになる。それでもそこに個の想いで抗うのが人なのだろうと思うお話でした。
最後に朝日と雪之丞が選んだ結末は、そうなるのかもしれないとぼんやり思っていたような、ハッピーとかバッドとかではなく、なるべくしてなるべくものになったような感じで読み終えたのですが、その後に読んだ番外で思わず号泣していました。自分は一人だからと超えてはならない線の向こう側へ手をのばそうとした雪之丞、それを日常へと反した朝日。その二人の物語を踏まえた上で描かれるのは、捨て子であった雪之丞を拾い育てた両親の、血が繋がらないこその苦悩と、それを越えていく親子の情。これを読んでようやくしっかりと、それでも二人の選んだものは決して間違ってなどいなかったのだと、そう信じられるような一編でした。本当に素晴らしかったです。