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ふわふわさんがふる / 入間人間

白い綿毛が降り注ぎ、人の形となるふわふわさん。必ず失われた者の姿をして現れるそれが、かつて目の前で姉を失った少年のもとに現れる、あの頃と変わらない姉の姿のままで、というお話。
主人公は両親も姉も失い一人で暮らす車椅子の少年。学校にいっているわけでもない彼の世界は飼い犬のリッキィとお隣さんと仕事先のお姉さんに閉じきって、失われた者の形をとったふわふわさんという存在には複雑な、ネガティブな感情を抱いていて。そんな彼のもとに、恐れていたことが、姉の姿をしたふわふわさんが訪れる。
このふわふわさんという条理を超えた存在が実際なんなのかは描かれることはなく、主人公を通じて分かるのは、白い綿毛、白い髪、そして常識がずれていて好奇心が強く、姿をかたどったものの記憶を持っているようにも見えるということだけ。ただこの作品はたぶんそういうことを細かくどうこういうものではなくて、『よみがえり』だと思う人も『星を継ぐもの』だと思う人もいて、少年にとっては姉と同じ姿の別の何かであるということだけなのだと思います。
姉とは違うのに、姉を思い起こさせるその存在を扱いかねて、でも機械のような生き物のような不思議なしゃべり方をするふわふわさんに懐かれて、少しずつ彼は変わっていく。止まっていた時間が今に追いつかなくとも、頑なに固められていたものは解けていくそんな柔らかい物語は、不可思議な他者の存在が少年の心を溶かしていくような優しさがあって。イメージ的には、電波女のエリオが本当に人間ではないという感じ。それは多分、どこか終わってしまったような世界の中で少しずつ取り戻されたり、確かめられたりする人間らしさで、それは特別なものであって、その描き方がやっぱりこの作者はとても上手くて好きだなあと思った一冊でした。

以下ネタバレあり







と、思っていたらラストに梯子外しが発生しておおう!? みたいな気分に。ふわふわさんが明確に人ではなかったことで油断していたら、少年も人ではなかった、そして彼の姉も周りの人々もまたという。「終わってしまったような世界」は正しく終わってしまっていて、「人間らしさ」を取り戻す物語として読んでいた前提を壊された時に、それでも彼が辿った想いとふわふわさんと暮らした日々は変わらないだろうという気持ちと、ここには人が居なかったとしてこれは何なんだろう? という気持ちが入り混じったようなもやもや感。というか、そこを崩して作品として何の意味があるの!? みたいな。
何にしても読者的には読む途中で積み上げてきたものの前提をさくっと外されたような投げっぱなし感があるので、彼らがそういうものであったとして、その上での何かを続編で読みたいなあとは思いました。そこに差分を見てしまうほうが悪い、と言われればそれまでなんですが!