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東池袋ストレイキャッツ / 杉井光

いつもの能力はあるのにヘタレな杉井主人公で、凄い才能があってツンデレな杉井ヒロインで、怖そうだけど面倒見のいい杉井兄貴分キャラで、そして音楽もの。どこで切ってもそれとわかる杉井光の作品であって、それはつまり、結構な冊数を読んできた人からすればもういい加減いいかなと思ってしまう要因になりかねないものなのですが、でもやっぱり素晴らしいものは素晴らしい訳で。本当、良い物語でした。
4編の話で描かれる東池袋ストリートミュージシャン達の物語は、不投稿で引きこもりの主人公が、拾ったギターに憑いていた事故で死んだあこがれのギタリストの霊と出会うところから始まります。滅茶苦茶なそいつに蹴っ飛ばされるように家を出て、池袋で歌い始めて。そしてそこで出会った少女と、ストリートミュージシャンたち。不器用で、心に傷を持った人々を繋ぐ音楽と東池袋の路上という場。
全てにおいて都合が良すぎる物語ではあると思います。ミウの正体もハルの才能も、彼女が彼に惹かれた理由も、優しすぎるくらい優しい街と人々も。それでも、どうしようもなく行き止まっていた迷い猫たちを受け入れた場所と人。慣れ合うわけではないけれど、しっかりと共有されたもの。ロクでもない引きこもりだったハルにも、音楽があった、ロックがあった、そして出会った。自分の手にはとても収まらない大きすぎるものに振り回されていたミウも、ここで出会った。このとびきりに不器用で優しい物語にはずっと音楽が流れていて、触れたら壊れそうなくせに色々なものを救えそうな気分になる、そんな一冊でした。すごく良かったです。