映画『ALL YOU NEED IS KILL』

原作のラノベを読んだのはもうずっと前で、その時は一部界隈で話題になったけど売れなかった作品であって、それがハリウッド映画化らしいとびっくりしたのだって相当前で、それがこうやって形になって目の前に現れただけでもほえーと間抜けな顔をしてしまいそうなのに、それがワーナーでトム・クルーズ主演の超大作ってあんたそれはもういったいどういうことなのさ、という作品。
そんな感じでどう受け止めるべきものなのかイマイチわからないままに観に行ったところはあったのですが、そんな細かいことはどうでもいいとばかりに2時間圧倒される誇張なしの超大作でございました。脚本凄い、映像凄い、トム・クルーズ凄い、ハリウッドパない、any questions? みたいな。
とにもかくにも圧倒されるギタイとの戦闘シーン。戦場の空気、音、飛び交い堕ちるヘリ、バトルスーツを着た兵士たち、常識外の動きで襲い来るギタイ。初回からとんでもない展開とスピード感なものが、ループを繰り返して圧縮高速化されていく迫力が半端ないです。後半にかけて少し落ち着いてのストーリー展開、リタとの関係、そしてラストバトルへという流れも、それまでのループで散りばめた要素をしっかり拾って、ハリウッドらしく盛り上げに盛り上げて、無駄なくそつなく面白くで原作と違うからどうこうという隙すら無い感じでした。
そしてトム・クルーズ。圧倒的にヘタレな広報担当の軍人が命令違反で新人兵士として放り込まれる戦場、ということで年齢と原作に豪快に折り合いをつけてからは、ダメダメなおじさんがループを繰り返していくにつれて、これこそトム・クルーズみたいな超人に成長していくのがもうすごいトム・クルーズ。原作を読んだ時にはそんなことさっぱり感じなかったのですが、映画を見るとまさかこれはトム・クルーズのためのストーリーなのでは……? みたいな気分にすらさせるものがありました。
そんな感じで原作をかなりアレンジしてトムの映画になっているのですが、それは決して原作を適当に扱ってる感じはしなくて、骨子であるゲーム的なループという部分はしっかりメインに据えられてブレない感じ。この辺の脚本のセンスは凄いと思います。この原作だからトムが引き立ったし、トムだからこの原作が引き立って、全く新しい映画版の『ALL YOU NEED IS KILL』ができたという感じ。
トムが繰り返して死ぬたびに情報を集め攻略方法を考え見つけて強くなっていくあたりはまさにゲーム攻略感満載。序盤の1-1クリボーに激突している感じから、無限の残機を活かして超難易度クソゲーに挑戦していく展開、メタルギアもびっくりな覚えゲーでの潜入に、残機ゼロになってからの驚異的な粘りと、凄い映像でおくるゲームセンターCX的な楽しみ方もできる作品になっていました。
ただ、トム・クルーズが主演ということで当然ではあるのですが、原作の持っていたボーイ・ミーツ・ガール感だとかきみとぼく的な青さと狭さと世界みたいな、あの空気というのはほとんど無くなっているので、そのへんも好きだった身としてはちょっと残念な感じも。そしてそれが最終的に外に向かっていくか、内に向かっていくかという終盤の展開の決定的な違いであり、結末の違いにつながっているところだとも思います。まあ、これはそういう映画じゃないと言われればその通りで、そこをすっぱりと切り捨てることでこれだけのものを見せられちゃえば、そういうものはやっぱり別の方面に求めるべきなのかなあとか思ったり。でも、これだったら邦題もそのまま『Edge of tommorow』だったんじゃないかという気がしなくも、ないような……。
終わってみればそんなもにょもにょ感も若干ありつつ、見ている間は圧倒されっぱなしのハリウッドの本気凄いとしか言えないようなSF大作でした。細かいことは考えずに、凄かった! 面白かった! トム・クルーズかっこいい! というのが一番の感想なんじゃないかと!