天久鷹央の推理カルテ / 知念実希人

天医会総合病院の副院長にして、統括診断部の部長である天才女医天久鷹央が部下の小鳥遊優と共に不思議な出来事に潜む病を解き明かしていく日常よりの医療ミステリ。
という訳で、4つの事件からなる医療色ありキャラ強めなでオーソドックスなミステリ連作短編なのですが、非常にソツのない一冊だなあという感じで面白かったです。なにより鷹央のキャラクターが、飛び抜けた診断力を持つ27歳の天才系女医で、見た目は高校生か中学生みたいで、傍若無人でピーキーで人を振り回し、けれど追い詰められた立場になると脆い部分があるという、あー私こういうキャラ他にも知ってるそして漏れ無く転んできてる……という感じ。なれる!SEの室見さんとか、ドラフィルの七緒とかを知っていればまさにそういうキャラクターです。
そんな感じに楽しく読んでいたのですが、小説全体としても必要な情報やキャラクターの描写が最低限に提示されて、謎の方もなるほどと思えるように解決してという、非常にスッキリとした読み心地の一冊でした。軽く読めて十分楽しい、良く出来たものを読んだなあという得した気分になれる、というか。
話的には最初の二編で鷹央と小鳥遊のキャラクターをはっきりさせつつ医療ネタを絡めたミステリなのだなと思わせて、3つ目の謎でちょっと捻った展開に難しい患者という医療の現場を見せ、そして4つ目の謎。1つ目の謎で少し出てきていたモンスター的な母親と原因不明に体調を崩した少年。彼女から訴えられた鷹央が病院内での立場的にも追い詰められていくというハラハラする展開で大きな話が来るという感じ。そしてピンチからの鷹央たちの逆転劇も気持ちよく決まって、やっぱりすっきりした気分になりつつ、その中に医療現場のシビアさみたいなものも垣間見える一冊だったと思います。面白かったです。