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はたらく魔王さま! 12 / 和ケ原聡司

感想 ☆☆☆☆

はたらく魔王さま! (12) (電撃文庫)

はたらく魔王さま! (12) (電撃文庫)

エンテ・イスラでのあれやこれやが終わって仕切り直しの前巻があり、ある意味「魔王」と「勇者」であることを基にした話は一段落かと思っていたのですが、全然そんなことはなかったというか、そっちの方向から来るのか! といった感じだった12巻。
ライラが持ち込もうとしている厄介だけれど恐らくエンテ・イスラにとって切実な問題を、感情で恵美が撥ね退けるのは、彼女の脆さを散々見てきた読者的には納得なのですが、真奥がどうしてそこまで頑なにライラをシャットアウトするのか少し不思議に思って読んでいたのです。そして彼がどうしてこんなにもある種の停滞でもある現状維持にこだわるのかも。
ただ、ガブリエルに切った啖呵でその辺りが腑に落ちたと同時に、やっぱり真奥は「魔王」であり、恵美は「勇者」であるのだなと。特に恵美に、期せずして持てる者になってしまった彼女に対して、ノブレス・オブリージュじゃないですが、周囲が当たり前に背負わせてしまってきたものを、母親であるライラが当然の顔をして再び突きつけるのは、現代日本のボロアパートで生きる手の届く範疇の日常を大切にしてきた真奥にとって、その時点で切って捨てるべきことだったのだと。彼らの背負ったファンタジーで大きな設定と、庶民的でちっちゃな日常はまだこういう形で対比されるんだなあと思ったり。
そしてそんなところから一気に縮まる真奥と恵美の距離がまた面白かったり。「力ある者」だった恵美にとって初めて守ってくれる相手が真奥というのは皮肉なのかとも思いますが、それを受け入れた後のデレ具合がちょっとどうしちゃったのと。そりゃちーちゃんも気が気じゃないし、先んじてエンテ・イスラでデレていた鈴乃もおかしいしの真奥空前のモテ期到来っぷりでした。真奥がライラに仕掛けたことに対しての恵美の反応とかもう、完全に斜め下を行ってましたからね!
そんな感じで楽しかったのですが、ただちょっと作者の丁寧さがここに来ての背景設定の広がりと、あととにかく登場キャラクターが増えたことによって裏目にでてるというか、説明しすぎて逆に読み辛くなっているいるきらいがあるような、気もしたり。