四月は君の嘘 11 / 新川直司

アニメが先に完結していたので、どういう結末なのかは当然分かっていたのですが、それでもダメでした。もうですね、ただ号泣でした。
宮園かをりがどうなってしまうのか。それが最終巻に向けての大きな流れとしてあって、正直死んでしまっても、公生があれだけかをりに依存して立ち直った中で悲しい結末にしかならないだろうし、かといって生きていたらここまでやってそれもどうなのだろうかと思っていたのです。
そんな中でのこの最終巻。容態が悪化して手術へと向かうかをりと、かをりのことを知って崩れてしまった公生。けれどそんな状況でも諦めないと言うかをりとの対話を通じて、そして周りにいてくれた人たちすべての存在を糧に、彼は舞台で演奏をする。失ったものも、得てきたものも、全てをさらけ出して演奏に変える。彼は演奏家だから、ピアニストだから。それはきっと修羅の道かもしれなくて、それでも彼はそうやって生きていく人種だから。
そして、かをりに最後の別れを告げて。
このボーイミーツガールは、突然に現れて、彼にとってかけがえのない存在になって、彼をもう一度演奏家の道に引き戻した、宮園かをりという少女との物語。短すぎた季節を駆け抜けた、まるで天使か妖精のようだった彼女との出会いと別れの物語。
だと思ったのです。でもそれだけではなかった。かをりからの手紙。

そして、一つだけ嘘をつきました。

ああ、宮園かをりは手を伸ばしても掴み取れ無い、そんな存在ではなかったのだと。彼女の想いと彼女のしてきたこと、そしてついた嘘、四月は君の嘘というタイトルの意味。それが見えた時に物語は形を変えて、ボーイミーツガールは同時に限られた時間を精一杯に生きた少女のガールミーツボーイでもあったことを知りました。それが、不意打ちで、ちょっともう、言葉にならないものがありました。
これは本当に感情に訴えかけてくる作品だったなと思います。音楽ものであっても紙の媒体だから当然音は聞こえない。ただ、絵と言葉で琴線をがしがし突いてくるような、感情の閾値をちょっとしたシーンでいとも簡単に超えて心を動かされるような、そういう小細工なしでダイレクトな力のある作品でした。最初から最後まで、ずっとずっと、素晴らしかったです。