3月のライオン 11 / 羽海野チカ

読み始める前にしっかり心を落ち着けて万全のメンタルでいかなければ呑み込まれる……!! みたいな気分でここ数巻は向き合っているのですが、いやもう本当にそのくらいの心構えがないと相対することができないくらいのパワーがある作品だと思います。ハチクロの頃だって凄かったのですが、羽海野チカとんでもないなと改めて実感するというか。端から端まで魂削って剥き身で勝負してきてるんだから、読む方も真っ向から受け止めにいって思いっきり押し流されてなんぼでしょ、みたいな。
という訳で零君が身勝手な要求をしてきたひなたたちの父である誠二郎に向き合うお話。まだ19歳。けれど何もないところから這い上がってここまで来た、海千山千のおじ様たちの世界で揉まれて、どんな時も投げ出さずに盤にかじりついてきた彼が、大切な人のために一歩も引かずに渡り合う。読んでいる方はカッときて殴りたくなるようなことをペラペラと並べる誠二郎に、一手ずつ詰めていくような対応を取るあたりが、この子は凄い子なのだと、そしてそうなるだけの道のりを彼の足で歩んできたんだと感嘆しました。そしてそれを踏まえて読む彼の歩んできた道を描いた『ファイター』がもうね、うああああってなります。
そして作品としては、ひたすら何を言っているかわからない破綻したモンスターのように見えていた誠二郎が、どこかの誰かのヒーローを演じているだけなんだとしれた時の背筋がゾッとするような感覚がとても印象的でした。ああそうか、ただそれだけのことだったのか、それだけで人はこんなことができてしまうのかと。
ちょっとアクセル踏み込みすぎて暴走気味な零君ですが、あまりに多くのものを背負い込みすぎたあかりさんんために何をしてくれるのか、若干というか大いに不安に思いつつ次の巻を楽しみにしたいと思います。
そしてポジティブ大権現こと藤本雷堂棋竜が最高に良いキャラをしてたので再登場に期待してます!