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GOSICK PINK / 桜庭一樹

感想 ☆☆☆☆

GOSICK PINK

GOSICK PINK

GOSICKの新シリーズはここまで二冊、面白いのだけど前々からのどこか神話めいたような語り口と新世界アメリカの様子が上手くなじまない感じというか、雑然として騒々しい印象があってどうなのかなと思うところがあったのですが、ここまで読んですごく腑に落ちた気分に。
新大陸の効率を重んじて、忙しく、けれどまだ貧しい混沌の時代、新時代。その地で旧世界から大きな嵐を生き延びたオカルトの頂上たる灰色狼がどうやって生きていくのか、これは多分そんなシリーズで。そして、一人で何もできないほど小さくて薬物中毒の後遺症を引きずったヴィクトリカ・ド・ブロワという、「ほーむ」が何を指しているのかもわからない彼女は、それでも灰色狼としてこの街で生きていくのだなと思うのです。
新しい世界と新しい時代になり、彼女の周りと取り巻いてきたものの空気はすっかり変わった。マルグリッド学園も、ソヴュールも、あの図書館塔も数々の冒険も旧時代のものは全て過ぎ去った。その中で、ただ一人久城一弥という青年を隣に、彼女は新時代を生きる。だからわからないことも多く、解かれるべき謎がここにはないと嘆き、一人では何もできなくても。旧い世界とともに打ち捨てられる運命だった灰色狼はそれでも、その退屈を持て余した大いなる頭脳で謎を解いて、そこからの繋がりで<回転木馬>の一室を手にして、グレイウルフ探偵社を始めるのです。
灰色狼は灰色狼のままに人間になっていく。この新しい世界で。そういうシリーズだから、語り口というか作品の雰囲気自体に、旧世界と新世界のなじまないままに入り交じる雑駁さがあるのは、逆に自然なことなのだろうと思ったのでした。
無花果とムーン」を読んだ時にも思ったのですが、「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」や「少女には向かない職業」でかけられた呪いをふりほどくように、変わらなくても変わっていく地続きの未来がここにはあるのだと思います。そんな、ヴィクトリカと一弥の、その先の物語。ゆっくりでも、長く続くシリーズになれば良いなと思います。