- 作者: 青崎有吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/12/17
- メディア: 文庫
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十九世紀末のヨーロッパを舞台に怪物事件専門の探偵"鳥籠使い"が事件の謎に挑むというお話と書くと、とても真っ当にミステリっぽくて、実際に真っ当なミステリをしている作品なのですが、ただそれ以上に濃い目の味付けが目立っているというか、口に入れるとびっくりする系の一冊。2篇からなる事件がヴァンパイア絡みだったり、フランケンシュタイン絡みだったりという怪奇趣味的なところはもちろんその一因なのですが、何が主因かといえばこの探偵役である鳥籠使いのインパクトなのかなと。
何がどうして"鳥籠使い"なのかはネタバレになるので避けますが、探偵である輪堂鴉夜と助手の真打津軽、この東洋からやってきた二人のキャラクターと掛け合いの強さといったら。悲劇的で後味の悪い事件に横から入ってきて、わざと壊すわけでもなく、事件に呑まれるわけでもなく、ただ在るようにしてあるだけで空気を変えるような存在感。噺家崩れみたいな喋り方の津軽と、超然としているようで意外と崩れる鴉夜(物食べるシーンとかどうしろと)、その背景にあるもののとんでもなさ。
流れるような語りの勢いも合わせて、実際酷い事件のはずなのに、彼女らの解決したあとに馬鹿馬鹿しさというか、どうでもよさというか、喜劇ではないけれど思わず笑ってしまう何かがあって、その感覚が妙に癖になる物語でした。読んでいて凄く変なテンションの上がり方をするような。
そんな感じでとにかく不謹慎にも面白い、みたいな感触の残る1冊目ですが、シリーズとしてはまだ顔見せという段階で、明確な敵の姿も描かれてここから更に面白くなりそう。ちなみに舞台と設定がこういうものなので、ドラキュラやフランケンシュタイン以外にも元ネタありものものが放り込まれています(灰色の脳細胞とか)。私は多分拾いきれていないように思うのですが、ただ敵が何者なのかはとても有名な方なので分かりますし、それをやられたらどうしたってわくわくしますよね!