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大橋彩香ワンマンライブ2016 「Start Up!」@Zepp DiverCiy

感想 ライブ/イベント

1stアルバムを引っさげての待望の1stライブ、やっぱり歌はすごく安定していて、のびのびと楽しそうに歌う姿がとにかく印象的で、とてもシンプルに元気になれる良いものを見たなあと思いました。可愛い! 元気! 笑顔! 最後ちょっとだけ涙! みたいな、これぞ大橋彩香というイメージ通りな陽性の感じ。へごっているとまでは行きませんが、ぐにゃぐにゃするMCもなんというか普段通りで、最後の最後にはけるときに「下げてくださーい」とスタッフに主張する決まらなさまでとてもらしいライブだったと思います。
そしてそれ以上に感じたのは、大橋彩香という人がやりたいこと、表現したいものがよく見えた1stだったということ。いつもにこにこしていて仕事は真面目にそつなくこなすというイメージに、ここ最近の発言やアルバムの中身、そしてこのライブに至って、奥行きができたというか立体的になった、そんなふうに見えたライブだったと思います。


それで、ちょっと長くなりますが、なんでそんなことを思ったか、という話を。
私は声優で誰のファンなのと聞かれるとへごのファンですと答えるのですが、最初に島村卯月役の声優に決まって存在を知って初期のデレラジを聞いてた頃は特段好きな訳でもありませんでした。シンデレラで見ても常に崩れない肝の座った子だとは思っていましたが、それ以上には。
面白いなと思ったのは、てさぐれ!部活もので周りの影響で割と何でも喋って良いと思ったのか、イケメン好きの二次元オタクだのどんちきだののキャラが立ってきて、小学生レベルの下ネタで荻野可鈴ときゃーきゃー騒いでいた辺りから。その流れでラジオのあどりぶが始まってからもずっと聞いているのですが、そうしているとだんだん分かってくることがあって。
アイマスの仕事の時とかソロデビュー決まっての活動とかを見ていると、いつも笑顔でポンコツで孫っぽいなんて言われる愛嬌全振りで濁点多めの喋りが特徴的なのですが、なんだかそれだけじゃない感じがあるのです。裏表がある訳ではなさそうですが、正体がつかめない感じというか。
で、ラジオを聞いてると闇エピソードがぽろぽろ出てくるし、興味がある話題(イケメン、ペペロン、猫)以外の時は基本ダウナーだし、まず他人に興味が無いし冷めてるし私基本真顔です、みたいな感じが漏れ出るし本人もそんなこと言うし。相方の巽悠衣子がそんなもの気にせずに距離を詰めてくるタイプなので最近は姉妹のように仲良さそうなのですが、最初の頃は割と露骨にその辺が出ていたように思います。深入りしないさせないの空気が、あまり何かを信じてない感じというか、若干の諦念が滲むような印象すらあって、演者としてアーティストとして笑顔で前面に立つ活動とのギャップが凄く不思議に思えていました。正直に言えば、こういうタイプの人がなんでそんな活動を? という疑問すらあって。
私自身が、自分自身を表現者とする人たちには、技術はもちろんですがその生き様というか、その人自身の物語を見せて欲しいと思ってしまう質なので、それが何だかピースが欠けたような印象としてずっと残っていました。


それで、その辺りが少しずつ自分の表現として開かれて、見ているこちらからすると像を結んでいったのがここ最近の活動なのかなと。「笑顔なんて誰でもできる」と泣くデレアニでの演技を自分に重なると言ったり、ラジオで「最近人間性を取り戻してきた」と言っていたりと。
そしてその流れで、本人も制作にかなり関わったという1stアルバム。

起動~Start Up!~(初回超限定盤)(Blu-ray Disc付)

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このアルバムについてのインタビューで歌うことは苦手で人前で歌うのも嫌だったという話をしているのですが、それも踏まえて『RED SEED』という曲を聞くとかなり踏み込んでいるというか、攻めてきている印象があります。そしてこれを本人がインタビューで「本心」と言っていることの意味は大きいんじゃないかなと思うのです。
曲順で前の曲である『ENERGY☆SMILE』が表面とすれば表裏一体の裏面みたいなこの曲は、その笑顔の活動をひいた視線で見て息が詰まるようにも感じながら、それを踏まえた上でも、誰かのもとに届いて笑ってくれるといいなと歌い続けることを謳う曲。つまり歌う理由を歌った曲で、ここにきて欠けたいたピースが繋がったというか、彼女の表現する「大橋彩香」という物語が見えたように思いました。


で、ここまでが前段。となるとライブで期待していたのは、この『RED SEED』という曲で何を見せてくれるかだった訳ですが。
結論から言うと特に何も見えなかった。かっこいい曲のゾーンで歌われたのですが、その中の一曲であって、良かったけれど特別な何かではなかったから少し肩透かしな感じもあったのです。ただ、ライブが進んでアンコール前ラストの『流星タンバリン』まで行って、大変な勘違いをしていたことに気がつきました。
インタビューでも、この後のMCでも、皆に笑ってもらいたい、皆に元気になってもらいたいと語っていた彼女がライブで表現するのは、そりゃあそっちじゃないだろうと。考えてみれば当たり前のことを、この曲での楽しそうな笑顔と、そして何を歌うのかを歌ったような歌詞で思い知った感じでした。
そして、本当のラストに自分のワガママでもう一曲やりたいですと歌った、アルバムのリード曲である『ABSOLUTE YELL』。会場全体の幸せなそうな空気と、ステージ上で見たことがないくらい楽しそうにしている姿が、一曲目で歌われた時とは随分変わっていて、この1stライブにおいて一貫して表現されてきたものと、それがオーディエンスに伝わった結果を示した、大橋彩香の歌はこれ! というパフォーマンスだったと思います。本当に、ライブ全体を通しても最後のこの曲が一番良かったです。
MCの中での「皆さんと信頼関係を築いていきたい」という言葉。なかなか自分を表現しないタイプのように見えていた人が、自ら作っていった最初のワンマンライブで語るその言葉にはやっぱり特別な意味があると思っていて、その信頼関係の先に表現者としての彼女から一体何が出てくるのか、それをもっと先まで見ていかねばと思うようなライブでした。とても良かったです。