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砕け散るところを見せてあげる / 竹宮ゆゆこ

感想 ☆☆☆

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

救いの手すら拒絶する、虐めても良い変わり者だとクラスの空気の中でなっていた少女を、受験を控えた残り少ない学校生活の中でも、どうしても放っておけなかった少年。彼女のヒーローになろうとした少年と、彼との出会いで諦めることをやめた少女が虐めに立ち向かう物語は、いつしか彼女を虐げていたもっと大きな事実に行き当たって。
アップテンポなキャラクターの掛け合いと動き出したら止まらない物語はこれまでの作品でもあった竹宮ゆゆこらしさで、理屈を超えたその先のドライブ感が圧倒的。ですが、今回はそれが向かう方向がとにかく辛い向きになることが序盤から見えてしまうので、読み進めるのに苦しいものがありました。ああこれはダメだと思っても、振り落とされないようについていくのがやっとのような。
二人はまだ子供で、手の届かない敵がいて、それをUFOだと呼びます。それを撃ち落とそうと奮闘して、これ以上はというボーダーを分かっていても踏み越えて、それでもまたUFOはついてまわる。どうしようもないと分かっていても、計算も妥協もなく立ち向かうのはなぜか。
まあ理由なんて、救いたいと彼が思ったからで、彼女の笑顔を彼が見たかったからで、彼女がそれを信じて行き詰まっていたところから足を踏み出す勇気を出したから。だからやっぱりこれは、愛の話でしかない訳で。
帯でも少し匂わされているのですが、この作品には構造上に大きな仕掛けがあります。それは物語そのものをひっくり返すようなものではなく、撃ち落とせたかどうかで終わらせないためのものだったのだと思います。どうしようもないはどうしようもなくても、それは単に失敗で終わるものではない。愚かであってもそれが愛であるならば、それは誰かの心に残ってずっと繋がって、その人が走りだすための力になるのだと、そういう物語だったのだと思いました。