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ストライクフォール / 長谷敏司

長谷敏司ライトノベルでストレートなエンターテインメント作品をという割に、宇宙でロボット同士が戦うチームスポーツものという今のライトノベルの流行からアウトコース低めに外していくような一冊。ですが、もうこれはひたすらに作者からのこういうの好きだよね? にページをめくるたびに大好きです! と返していくような、真っ直ぐで熱い少年漫画チックな物語でした。
宇宙からもたらされた人類超えた技術で作られた人型のストライクシェルで、宇宙を舞台にチームごとに闘うストライクフォールという競技。軍事技術開発をスタートとして代理戦争の側面も持ったそのスポーツの選手に、かつて両親を失った事故の際に救われた雄星と英俊の双子の兄弟は、やがてストライクフォールの選手を目指す。そして才能を示しめきめきと頭角を表した弟がトップリーグの一軍へまさに上がろうという時に、その兄である雄星はまだ地上でくすぶっていて。
地球の重力、兄弟を育てまた縛る家という重力、「落ちている」という表現、宇宙を翔けるストライクシェル、向こう側に手を伸ばすチル・ウェポン。重ねるような表現の使い方は長谷敏司らしく、ただ長谷敏司作品の中では一番シンプルにエンタメをしている作品だと思います。個人的には、長谷敏司作品の色々なものがぎゅっと詰め込まれた濃さみたいなものが好きなので若干物足りなさはありつつも、ただやっぱりこれは素直に面白いなと。
才能に勝る弟へのコンプレックスを抱える兄と、凄いと認めているが故に自分のいるところにさっさとあがってこない兄に不満をぶつける弟。そして彼らを引き取り育てた家の娘である環にそれぞれがもった恋心。その気持がぶつかり合う練習場での模擬戦は、まさにそれぞれの理由を背負って殴りあうから格闘技は熱いんだよというもの。そしてそこからの急展開と、全ての想いと覚悟を背負って宇宙に出る雄星の一度きりの闘いはまさに王道を行く展開で、メーターを振り切るような熱さと恐怖の向こう側の爽快感がありました。
あとは地球にやってきた時に雄星に特訓をつけた、英俊のチームメイトにして二軍女子得点王、自由奔放な性格のアデーレが、わかりやすくツボで自分チョロいなと思いました。でも、前向きで強気で考えなしのようで気遣いはできて色々と雄星にアドバイスをくれて、金髪で赤いストライクシェルに乗っていてなんかこの子満点なんじゃないかと。
そして、走って、飛んで、全てを振りきって遠くまで行こうとする双子の姿と対比される、地球の家の重力の象徴のように描かれる環の姿。危険な世界に飛び込んで行こうとする二人を見て、どうやっても変わってしまう関係の中で彼女が願うことが、それも間違いでもないと思うだけに、切なく重たく感じるものがありました。
雄星に向けた

「……ダメになってもいいのに」

はちょっとゾクッとくる一言だったなあと。
雄星の取った行動も含めて、今回の事件の結果は彼らの未来に激動をもたらすだろうもの。このスタートから一体どんな物語が生まれるのか続きを楽しみにしたいと思います。