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この世界の片隅に

感想


映画『この世界の片隅に』予告編

なんかめっちゃ生きてた。戦争のあった時代の広島、呉という場所で、すずという人がめっちゃ生きていた。見ている間も見終わった後も、一つの物語を見たというよりも、ある人の話を深く聞いてきたみたいな感覚になる映画でした。
たぶん、よく言われている時代考証の綿密さだとかその他色々なこだわりがそれをもたらしているのだと思いますが、とにかくこんなに生活があった、生きてたと感じられる映画はなかなかないように思います。あまりにも一つの人生だったという感じが強くて、色々見ていて思うところはあったものの、あの時代あの場所を生きぬいた人の生活に私がごちゃごちゃ何かを言っちゃいけないでしょうと思わされる、それくらいのものがあった。
あと、のんのすずがもうはまり役だったとか演技が良かったとかそういう次元を超えて、これ本人だわ……としか言いようのないレベルで凄かったです。すずさんはほわっとしていて「あー」とか「えー」とかよく言うのですが、これがもう誰かが演じているというよりも、すずさんからはすずさんの声がするに決まってるじゃん、みたいな。あの生きてる感をもたらしているのは、この声も大きな要因だったのだろうなあと。
何が悪いとか何が良いとか、誰が良い人で誰が悪い人だとか、ドラマ性を強調したりだとかそういうものではなくて、ああいう時代にああいう生き方をしていた人がいたんだという映画。あまりに確固とした生活がそこにあったから、他人事というと言い方が悪いですが、境界がしっかりある感じ。でも、しっかりした輪郭があって、それが今にも通じるものと通じないものが綯い交ぜになっているから、今見ているすずさんの生活のスクリーンのこっち側にある、自分の生活ってどうなのっていうのを考えさせられるような作品でした。
とはいっても真面目に生きようとか正しく生きようとか、あるいは昔は良かったとか戦争は良くないとか、そういう大層なことは思わないのですが、なんというか、ちゃんと生きなくちゃと思います。いい加減でも良いけれど、安くしちゃいけないなと。