さよなら神様 / 麻耶雄嵩

 

さよなら神様 (文春文庫)

さよなら神様 (文春文庫)

 

 あの「神様ゲーム」の続編は、読み進めるごとに色濃くなる悪意にいい加減ならされていくようなところもあったのですが、いやでも、最後の「さよなら、神様」は、うわあ……意外に言葉が出ないですよね。

鈴木君は神様です。神様なので犯人の名前も当然知っています。神様の言うことは無謬です、だって神様だから。という基本ルールから構築されるミステリは、1行目の「犯人は◯◯だよ」という鈴木君の言葉からスタートする短編集。その言葉を元に主人公を始めとする久遠小探偵団が事件の謎に迫る……という形式なのですが、性格の悪い神様は面白いから答えたという程で彼らに縁のある人物の名を挙げ、そしてトリックも動機も語らない。

けれど彼らは神様の言葉に踊らされ、一見盤石に見えるアリバイを持っているその人物を疑わなければならないという時点でまず底意地が悪いです。そしてありえないところに考え得るロジックを通すという話から、短編を重ねるごとにまあ良くもこんな……という。真実なんて知らなければよかったみたいな話は序の口で、それが新しい事件につながるだとか、今まで見えなかった闇が見えるだとか、よくもこのパターンにこんなバリエーションをと思います。

抱えた真実は主人公を追い詰め、当然周りでそんな事件ばかり起きれば周りからの扱いも酷くなり、それでも無理をして心を折らずになんとか気張ってきて……からの「さよなら、神様」。来るべくして来た破綻。真実を語ったのは鈴木。では誰が何を仕組んでいたのか。操られていたのは誰か。

麻耶作品らしく、表面上ハッピーエンドを迎えたようなエピローグ。ラスト三行を読んだら、もう笑うしかないでしょう、これ。