閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 / 木元哉多

 

閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 (講談社タイガ)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室 (講談社タイガ)

 

 相変わらず読みやすく面白くて、新人の初シリーズ作品とは思えない安定感。話の中に因果応報の大原則が揺るぎないものとして存在しているので、非常に安心して読めるというのも高ポイント。あと沙羅が可愛いしな!

この巻も未練を残して死んだ者が閻魔大王の娘の前で、生き返りを賭けて、自分が誰に、何故、どうやって殺されたを推理する短編集という形式はそのままに、少しバリエーションを付けてきて飽きさせない感じ。一度死んだ人たちが、自分が殺されるに至った経緯や自分がどう生きてきたのかを振り返って、ちょっとだけ良い方に変わって生き返っていくのというのはこのシリーズのパターンですが、そこも捻ってきた2話目が良かったです。

あと1話目と3話目も、悪い人じゃないんだけどちょっと横暴で周りが見えないというか、自分が正しいという思いが強すぎた人たちが、少しだけ変わっていくその匙加減がまた絶妙で上手いなあと。その中心にこの世ならざる存在として沙羅がいるというのも、構図が決まっているというか、画になるというか、全体的にあるべきものがあるべきところにちゃんとある上に、一本筋の通った話になていて、本当によく出来ているなあと思います。そしてちゃんと面白くて読後感も良いという。次の巻もとても楽しみです。