神のゴミ箱 / 入間人間

 

 住人は変人だらけの安アパートで、主人公が手に入れた神のゴミ箱(他の部屋のゴミがやってくる)をきっかけで生まれていく、住民同士の奇妙なつながりの物語。つまり入間人間の十八番な訳ですが、いや本当にこういうの書かせたら滅茶苦茶に上手いなあと思いました。

ちょっと難ありというか、社会の真ん中から外れた人たちの、この微妙な距離感。夏の暑い日のあの空気感。言葉にできないはずのものが、読んでいると感触として確かに感じられるのが流石と思います。そして大きな物語ではなく、なんてことのない彼らを描くこの作品は、結果的に主人公の神(ジン)を廻る三角関係のような恋愛ものの色が強くなります。ワケあり中学生な木鳥の初恋物語も良かったですが、比内と神野関係がなんだか凄く、ああそういう感じってなる何かで良かったです。

というか比内という無職女性、情緒不安定で傍若無人でまず手が出るタイプという、所謂暴力系ツンデレヒロインをリアル方向に振って可愛げを取り払ったみたいなタイプの人間で、どう考えても関わり合いにならない方がまっとうに生きられそうなタイプな訳で。神との出会いもまあ碌なものではなく、その後のなんとなく切れない関係も大して碌なものではなく、別に話が進むにつれて性格が良くなることもなく。でもなんだろう、こう、失恋のダメージから対人関係に一線を引いていた神との間に不器用な縁ができていく感じ、ああなんか側にいるの悪くないなと最後には主人公と一緒に読んでいるこっちも思わされる感じ、とても良いなと思いました。

どうでも良い話と言ってしまえばそれまでで、起承転結という感じもなく行き当たりばったりで、でもだからこそ、こういう人たちによる、こういうなんてことなく微妙な関係を描かせたら、素晴らしいなと思う一冊でした。

ところで続編ありって明言されているのに3年半経とうとして音沙汰がないとはこれ如何に……?