アメリカ最後の実験 / 宮内悠介

 

アメリカ最後の実験 (新潮文庫)

アメリカ最後の実験 (新潮文庫)

 

 宮内作品は結構な割合でよく分からなくて、私の頭ではさっぱりわからん……と思いながら読むことになるのですが、これはまた過去最高に分からないぞという。

帯に「音楽バトル×ミステリー×エンタメ×純文学×SF×青春」という盛り過ぎでは? となるキャッチコピーが踊っていて、なんのこっちゃと思うんですが読むとまさしくそういう小説なのです。あらゆる要素がごった煮されていて、でもしっかり一つの話としては成立している、けど結局どこが主題なのかわからない。音楽はゲームだと悟った主人公が、それでもその先へ手を伸ばそうとする音楽の話な気がするけれど、この物語にとって音楽が何なのかわからないし、むしろ展開的には青春バトルものとなっていてさっぱり分からない……と思ってたら解説で作者の構想は音楽版「グラップラー刃牙」とあってなるほど……なるほど? って。

音楽がテーマということで言ってみると、様々な要素がサンプリングされてリミックスされた小説という印象です。そうであれば、それぞれの要素に引っかかってドツボにはまるよりは、総体として考えずに感じて気持ちよければそれでいいと思考放棄に私は至ったという。大真面目なのか与太話なのかすらもはや分からないながら、そこに価値があるのかとか、意味があるのかとか、そんなことはもう関係なく、読んでいる時は謎の楽しさがありました。うん。楽しかったからそれで良い。