今回も殺された人たちが、閻魔大王の娘の前で行き帰りを駆けて自分の死について推理するという形式のお話が3編収録。この短い期間に老若男女これだけのバリエーションの人たちの話を、高値安定のクオリティで出してくるのは凄いと思います。
という訳で今回は、子供とトラブルを抱えたお爺さんと厳しく育てられた妾との間の孫の話や、サイコパスとワイダニットの話など。相変わらず閻魔の善悪の物差しが確固たるものとして存在するので、因果応報が非常にわかりやすく安定しているのですが、こう続くとだんだんわざとらしさと言うか、価値観の固さや杓子定規さが目立つような気も。このまま沙羅は超越者として安定した世界観でシリーズが続くのか、これ自体が揺らがされるための伏線なのかというのも気になってくるところではあります。
しかしまあ今回は何が印象に残ったって、1話目が読み終わって百合だ!! って叫びたくなったことでした。醜く生まれた己を呪い優秀ながら前向きに生きられずにいた外園聖蘭と、芸術の才に恵まれ奔放に生きるミュージシャンのミミ。聖蘭の物語は読んでいてひたすらにきつく、最悪の結末の果てに生き返りを経て少し前向きになった所で、まあそう都合良くはいくまいと思って読んでいたのですが、ラストに向けての流れが。
だってもう明らかに、そこまで友人のために自分を捧げられますかって、それもそんなに奔放に生きてきた人がって話ですよねこれ。誰が見ても今人生のドン底にいる大切な人に、コンプレックスを逆手に取って私が輝かせてやるから、二人で生きていこうぜって言ってるようなものですよ。聖蘭本人は気づいていなくて、いつもの気まぐれだと思って終わっていて、そんな訳ねえだろ!! って思うところまで含めて大変良いものでした。良いものを読んだ。