ボクらは魔法少年 1 / 福島鉄平

 

ボクらは魔法少年 1 (ヤングジャンプコミックス)

ボクらは魔法少年 1 (ヤングジャンプコミックス)

 

 ヒーローに憧れる少年がファンシーな少女姿の「魔法少年」に変身し、羞恥で涙目になり、嫌がりながら自分の可愛さに道を踏み外し、その様子を見て読者も何かの道を踏み外す。そういう業を形にしたような作品、だと思ってたんです。1話を読んで。

確かにそれはそれで間違っていないのですが、1巻読み終えると、踏み外したと思っていた「道」ってなんだ? という疑問がですね、大きくなっていくというか。自明のように捉えていた固定観念を確実にずらされて、改めて自分自身に突きつけられたような、そんな感覚が残るのです。

カッコいいヒーローに憧れた少年が、可愛い魔法少女の格好になってしまう。けれどその導入の先に待っているのは超王道の物語。自分自身と向き合って、その心に素直になって、己を認め、信じること。少年の力の源は自信と誇り。そして信じたものを胸に、正義を貫き人を助けるなら、それはまさしくヒーローに他ならず。じゃあ、なれなかったはずのカッコいいヒーローって何だ? という。

なってしまったものなんて無く、踏み外した道なんて無く、少年は少年らしくあることで、彼自身の歩むべき道を歩んでいる。そこに何の間違いがあるのか。可愛い魔法少年をおかしなことだと思ったのは読者である私が囚われた既成概念に過ぎず、それは紛い物なんかではなく、本物なんじゃないだろうかと。だってこの作品、「魔法少年」は「魔法少年」なんだと、「魔法少女の格好をしている少年」だなんて一度も言ってないですから。