やがて君になる 6 / 仲谷鳰

 

やがて君になる(6) (電撃コミックスNEXT)

やがて君になる(6) (電撃コミックスNEXT)

 

 先輩と侑の関係は、一見すると普通に好きあっているように見えて、実のところ一筋縄ではいかないとても特殊な関係だなと思います。「やがて君になる」の序盤は、さらさらと描かれる物語の中で、その特殊さに踏み込む瞬間があって、少しずつこの二人がどういう人で、どういう関係を作っていくのかが明らかになる度に、うわああとかひえええみたいな気持ちになっていました。

それがだいぶ落ち着いてきたというか、ようやくある意味安定した関係性になっていたここ数巻だったように思うのですが、久しぶりにひえええってなりましたね、今回。

いや、ここまで読んできて分かっていたつもりなのです。この劇が先輩にとってどういう意味を持っていて、そこに侑が何かをしたことで、きっと先輩には何かが起きるかというのは。そして、侑が抱く気持ちが少しずつ形になっていることも。それが二人の関係を今までどおりではいさせないだろうことも。でもこんな、落ち着いてるかなと思っていた関係が鮮やかに反転するような最後のシーンは、ちょっと鮮烈に過ぎました。

美しくさらさらと流れていく話の中で、瞬間描かれる言葉、表情。突然水面からぐっと深いところに潜るような、その一瞬の切れ味こそがこの作品の凄みであり、エグみなんだと、改めて感じる一冊でした。