東京レイヴンズ 16 [RE]incarnation / あざの耕平

 

神は偏在する、等しくどんな時空にも、ならば魂は。斯くして輪廻は輪を成して、因果は巡り、宿業となる。

『幾瀬、幾歳の彼方で 』

時を超え、姿形を変えながら、二人の魂を決して引き離させはしなかったこの言葉こそが、この作品で一番強い「呪」であったのかなと、そんなことを思った16巻でした。

1巻から16巻までの積み重ねが全て伏線となって、土御門という家と陰陽道が紡いできた戦争から現代までの歴史の重み、そして夜光と飛車丸、春虎と夏目の時を超える魂の物語の重みでぶん殴られるような読書でした。いや凄かった。こんなの語彙力を失うしか無いでしょう。もうね、本当に。

幾度の転生を超えて惹かれ合う二人の物語というのは、まさに王道であると思いますが、このシリーズの肝は夏目が飛車丸に転生したという、過去に向かった時間の流れにあるのかなと思います。夜光は春虎に生まれ変わっている訳で、二人の時間は逆向きに進み、そして戻ってくる。ある意味、夏目は待ち続けるという厳しい選択をしたタイムトラベラーでもあって、それでも救うために送り出した夜光=春虎の苦悩、そして生まれ変わってもなおその道を選んだ夏目=飛車丸の思いが、輪廻の大きな輪の中で彼ら彼女らの物語を一つに結んでいく。そしてその始まりにして行き着く先が、あの14巻の最大のクライマックスに集約されていくこの感じ。

その中に、春虎や夏目が通っていた陰陽塾での出来事があり、東京に霊災が起きる理由があり、相馬が求める神降ろしの理由があり、土御門の歴史が、倉橋の歴史が包含されていく。これはすごいし、面白いのはもちろんなのですが、素直に美しいなと思いました。そして歴史の中にそれぞれの人生がある感じが本当に良くて、夜光亡き後、批判の矢面に立つ当主として先へと土御門を繋いだ小翳の生きた道とかもう泣くでしょ。塾長がどんな想いで陰陽塾を支えてきたかと思うとやっぱり泣くでしょ。

そしてまあなんというか、あの二つの魂は、これ以上の幼馴染ストーリーあるかという感じで、強いなと思います。だって、飛車丸、そんな、ねえ。全ての因果がこうして一点に集約されると、あまりに、あまりに感情の濃度が濃すぎる……。