閻魔堂沙羅の推理奇譚 点と線の推理ゲーム / 木元哉多

 

閻魔堂沙羅の推理奇譚 点と線の推理ゲーム (講談社タイガ)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 点と線の推理ゲーム (講談社タイガ)

 

相変わらず高いリーダビリティの短編でよくまとまった事件→死亡→推理→蘇りの流れと、揺るがない因果応報の概念と閻魔様の善悪観念で安心して読める完成度高い一冊でした。読者への挑戦嬢形式の謎解き企画をやっていたのも、過不足なく提示された要素から因果を結んで筋立てを整えるところに特化した推理ゲームとしての出来の良さがあってのものなのだなと思います。

今回は3編目のヤクザを足抜けしてうどん屋になった父親と娘が、かつて所属したヤクザの抗争に巻き込まれる話が面白かったです。組同士の抗争の中で、どうして身を引いたはずの自分が殺されたのかという謎は、いつもとはちょっと推理の要素が違ってきて面白い感じ。母を病気で早くに亡くして、元ヤクザの父親と二人三脚でやってきた娘の前向きさと健気さも泣けます。

そして2編目はまさかの沙羅の日常話。閻魔一家の中で、優秀だけどクソ生意気な年齢相応の娘をやっている沙羅の姿は、死者の前での超然とした存在感とはまた別物。わざわざこれを掘り下げてくるということは、この先審判者ではなく、沙羅自身が当事者となる事件もあるのかなと楽しみになりました。