【映画感想】Fate/stay night [Heaven's Feel] Ⅱ.lost butterfly

 

I beg you / 花びらたちのマーチ / Sailing(期間生産限定盤)(特典なし)

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 私はFateのゲームはやっていなくて、アニメとZeroの小説くらいしか通っていないのですが、十数年前にお前は絶対Heaven's Feel好きだよと言われたことはずっと引っかかっていて、いつか触れないとなと思っていたのです。それで映画化でこれ幸いと第1章を観て確かに他より好きだけどどうかなあと思っていたのですが、この第2章見てああこれもう全面的に好きだわって思いました。好き、凄く。というかこれ、当時触れていたら人生変わっていたかもしれないやつなので危ないところだったなって。

ufotableの作品ってなんとなく画面がパキッとしているというか、無機質な印象があったのですが、これはもう何もかもが湿っている感じ。どろっとした堕ちていくストーリーに淫靡さと情念が纏わりつくみたいな。どうしようもなく与えられた環境と本人の性質が導いてしまった間桐桜という少女の歪みと悲痛と、それでも縋ったものが作品自体の色を決めていて、もはや士郎の物語ですら無いぞこれと思います。泥の中へ堕ちていく様、美しく、酷く、極上の悪趣味で、それを物凄い濃度で突きつけてくるような作画と演出、声優の演技がとんでもなかったです。上映中の2時間、ずっと心臓を掴まれているような映画でした。いや、本当これ、可哀想なのにずるいの、弱さの中に滲むエゴみたいなの、桜好きだなって。凄い好き。

それでもって最後にかかる主題歌が「I beg you」なんですけど、まずこのタイトル……って感じなんですけど、詞曲合わせてこの呪いのような歌が空気を持っていく感じ、凄いなと思います。第1章の「花の唄」とは違う、こうならざるをえなかった、それでも、みたいな桜の歌で、歌詞が本当にもう映画そのまんまというか、あまりに直球というか。どこを読んでも桜、みたいな。作品のための音楽を作る時の梶浦由記という人は割と職人的なイメージがあるのですが、時々突き抜けた凄いものを出してくるなあと思います。個人的にまどマギ新篇のラストに「君の銀の庭」が流れた時以来の感覚でした。

というか、梶浦由記の音楽ってそれこそNOIRの頃からもうずっと、追い詰められながら闘っているみたいなイメージの曲がとても魅力的なんですよね。崩れて壊れていくのだけれど、それがどうしてか美しい、そこに何か心地良さがあるみたいな感じの。そういう意味で、劇伴含め梶浦由記ファンとして最高の映画でした。UBWの劇伴は外れて、HFの劇伴にはなった意味がよく分かるというか。

桜による桜のための映画という感じだったのですが、それ以外だとやっぱりバーサーカーの戦闘シーンが凄かったです。少女の叫びに呼応して、彼女を守るため圧倒的劣勢の中で何度でも立ち上がる狂った大男、明らかにこの映画の最萌え。あとアーチャーの役どころは本当に美味しいなって。それから衛宮士郎を初めて人間だったんだなと思ったし、初めて嫌いにならないで済むかもと思った映画でした。

あとこれ、セックスシーンがある映画で、ゲームの全年齢版には無いのかなと思うのですが、このシーンが無いと前後全く繋がらないのでは……? みたいな疑問が。あれがあるからこその、その後の桜の心情と行動と思うのですが、どうなっていたのだろう。