おにぎりスタッバー、ひとくいマンイーター / 大澤めぐみ

 

おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

 
ひとくいマンイーター (角川スニーカー文庫)

ひとくいマンイーター (角川スニーカー文庫)

 

 読んでまず思ったのは、すごく懐かしい感触だなということで。スニーカーからハルヒが出ていて、ファウスト系が元気だったあの頃の空気というか、これが2017年に出たということに驚くような、そういう感じを懐かしいなと思って、それから、すごく好きだなと思いました。とても好みです。

『おにぎりスタッバー』は地味だけれど援交だか売春だかで男を喰い漁っていると噂されてクラスで浮いている、女子高生のアズが主人公で、彼女の一人称で語られます。彼女の特殊性というか、まあ実際設定としても特殊なのですが、他人への興味の薄さと、ページに文字びっしりで綴られる躁っぽい勢いの語りがどこか閉じた世界を作っています。でも、特殊なんだけどやっぱり普通というか、倫理観ぶっ飛んだ話と、全然色彩が違うはずのピュアな恋の話が両立していて不思議な感じ。

この勢いの語りと、内向きなベクトルと、「魔法少女」「人食い鬼」「境界」なんていう設定と様々なネタや引用が無造作に放り込まれて無軌道に展開していく感じ。そして駆け抜けて個人的なような世界の大事のような何かがあって、その先に抜けた後に何も解決なんてしていないんだけれど愛なんだな、生きなきゃなって漠然と思うこの感じ。本当に懐かしくて、ああそうだこういうの好きなんだよなと思いました。

そして『ひとくいマンイーター』はそのアズの友人である魔法少女サワメグの語りによる前日譚。描かれるのは二人の出会いと、あと、サワメグの過去。彼女がなぜ魔法少女になったのか、なぜ長い栗毛の髪にこだわるのか。

世界観もページみっちりな文字密度も変わらないのですが、直感で生きている感じが強いアズから、小難しく考えがちなサワメグに語り手が変わることでうって変わって、より内向きに、鬱方向に振れた感じ。そもそも回想で語られる物語は、どこか悔いているような、ただひたすらに失って失って失われていくような雰囲気があります。

ある理由で記憶はあるのに自己の連続性を失っていることもあってか、ただ終わっていく、あるいは最初から終わってしまっているような、ダウナーな思考が吐き出されていく感じがすごく好き。それでもサワメグには今があって、執着したものがあって、出会った人がいて、時間は流れて、続いていく。章タイトルが論理哲学論考の引用で、魔法少女の闘いとミステリ的な要素と認識論的なテーマをかすめて、ラストの落とし方がこうなることも含めて良かったです。

読んでいて楽しい気分になるようなものではないし、ストーリー的にもサワメグには意味があって、ただ物語としては行き当たりばったりな展開になっていて、合わない人には何が面白いのかわからないタイプの話だと思うのですが、私はとても好きです。最後まで読んでやっぱり懐かしくて、あの頃から、こういうふうに、生きていかなきゃって思って十数年生きてきたよなって、切実だった、今も切実な何かを思う、そんな一冊でした。

 

なにかを変えられたとは思わない。

なにかが始まればいいと思う。