【小説感想】転生! 太宰治 2 芥川賞が、ほしいのです / 佐藤友哉

 

転生! 太宰治 2 芥川賞が、ほしいのです (星海社FICTIONS)

転生! 太宰治 2 芥川賞が、ほしいのです (星海社FICTIONS)

 

 1巻は太宰治が現代に蘇って、時代的なギャップに対してどういう反応を取るのかというifが、やたらとクオリティの高い文体模写によるおもしろかなしい道化っぷりと共に描かれていくのが楽しかったのですが、2巻にきて急激に地獄みが増してまいりした。というか、これは相当な地獄では……?

かつて自分が候補作になって落とされた芥川賞に拘る太宰が、女子高生地下アイドルをプロデュースして小説家に仕立てていく。それでもって、この女子高生には才能があった。あってしまったばかりに、2人の関係は拗れていきます。

道化の仮面を外せぬままに、コンプレックスと執着、安定しないメンタル、極端から極端へ振れる自己評価、恨み妬み、そして他人への無理解。芥川賞を目指して女を裏切り、心中未遂(転生後二回目)を起こして、現代という時代を流れていく太宰。どうしようもないのだけれど、どうにも気になってしまうのが佐藤友哉/太宰治たる所以というか。そして1巻と比べると、相変わらずの文体模写ですが、かなりユヤタン比率が上がっているように思います。

救えないディスコミュニケーションの積み重なりがもたらしたものが爆発するラストシーンなんてもう笑っちゃうようなひどい状況。それでも、あの場にいる人間は誰も彼も本当に切実で、人生の分水嶺に立っているというのが、もはや喜劇めいていて、なんともはや。そしてそこに至らしめた、絡み合った感情というか、絡まなかった故の感情みたいなものがあまりにも地獄めいていて、思わずドン引きするような一冊でした。

凄いところで次の巻へ続いたのですが、この先どっちに転んでも碌なことになる予感が、しない!