【マンガ感想】虚構推理 10 / 城平京・片瀬茶柴

 

虚構推理(10) (月刊少年マガジンコミックス)

虚構推理(10) (月刊少年マガジンコミックス)

 

 六花の鋼人七瀬事件以降の足取りを描いて物語は新章へ。

得体の知れない怪物的なイメージの合った彼女が、城平作品らしくちょっとズレた面白さのある人で、かつその九郎への執着が本物であることを印象づける短編を経て、裏では彼女が糸を引いてると思われるスリーピング・マーダー編に入っていくという、まさに桜川六花再始動の一冊。

そしてこのスリーピング・マーダーの事件。巨大ホテルグループの総帥が、かつて自らが妻を殺したことを証明することを遺産を相続する条件として子どもたちに提示し、それを発表する関係者が一同に会す場が設けられるという、完全に殺人事件を起こすためのお膳立てのような状況が整えられているのですが、実はこれ、証明不可能な命題。

実際には彼は企業トップとして暴走しつつあった妻を妖狐と取引することで殺したのであり、それを琴子に先に明かした上で、なおかつ彼は琴子に審判人の役目を委ねます。しかもそこで子どもたちにそんなことをさせる動機さえも語っている。つまりWhoもWhyもHowもあらかた情報開示済みで、ここには謎なんて一つもない。だけど理を通すために、そこに必要とされるのは虚構としての推理。そして、その虚構に複数人の思惑が絡んだ時に、一体この場所で何が起きるのか。

まさしくこの作品らしい、この作品だからこそできるテーマでいかにもなミステリ的構造を書き換えていて、ちょとこれはワクワクする展開になってきたという感じ。次の巻も、先に発売予定の小説の続編も楽しみです。