【小説感想】閻魔堂沙羅の推理奇譚 落ちる天使の謎 / 木元哉多

 

閻魔堂沙羅の推理奇譚 落ちる天使の謎 (講談社タイガ)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 落ちる天使の謎 (講談社タイガ)

 

 高値安定という感じでこの巻も面白かったです。

第1話は、元天才バドミントン選手の事故死の謎。国内バドミントンの発展に尽くした故人である彼女の父親、彼女を取り巻くコーチや今のトップにあたる選手たち、そして才能あふれる小学生選手。そんな人たちに囲まれて、才能に任せて努力をしてこなかった彼女が、ケガを契機に一線を引いた後、どのように過ごして、何を考え、そして殺されるに至ったか。

これがひっかけ問題のような話で、彼女から見た周りの姿や言動に、競技の世界のドロドロとした感情がもたらしたもの、最悪の最悪を想像して読んでいたのですが、実はそういうことだったとは。概ね爽やかで前向きな決着に、悪い想像をした自分の心が汚れてると思わされるような話でした。

そんな1話目があったからどこかで良い話になるかと思えば、ただひたすら小悪党の話だったのが3話目。その人間らしい弱さは分かるけれど、この作品の倫理観は閻魔の倫理観なのでそりゃあバッサリ切られますよねという。

しかしこれ、推理モノとしては変化球すぎるというか、反則ではと思って読み返したら、確かにそういうふうに説明されていたのだけど釈然としないというか、野球盤で消える魔球を使われたみたいな感じでした。いやだって、閻魔周りの設定と現実世界の設定は分けられた上での推理ゲーム……ではないな確かに。そもそも沙羅は現実世界に干渉しまくっているのが描かれてもきた訳で、いやしかし……。