【小説感想】安達としまむら 8 / 入間人間

安達としまむら8 (電撃文庫)

安達としまむら8 (電撃文庫)

 

 まずは、約2年半ぶりの新刊ありがとうございます。いやほんと打ち切られたと思ってたからね……やっぱ電撃で百合は難しかったのかと。それがTVアニメ化の吉報付きで出るんだから世の中捨てたもんじゃないと思いました。あと、ありがとうやがて君になる

内容的には前巻で付き合い始めた安達としまむらの修学旅行編。でも、相変わらず周りなんか見えていない、しまむらしか見えない安達と、付き合い始めてなお君は相変わらずだなというしまむらの二人の関係が続いています。しまむらの一人称で語られる「安達は1人では生きられないけど2人でなら生きられる」「私は1人ぼっちでは生きられるけど2人で生きるのは難しい。実感を得るには沢山の人が必要だ」が的確に本質をついていて、そこまで分かっていてあなた何なのしまむらさんという感じ。

そして相変わらず関係性とか感触の描写が大変上手いので、要所に切り込んでくる表現があって強いなあと思います。5人の班で、しまむらのことしか見ていない安達と、残り3人の班員の間に流れる、険悪ではないけれど距離感のある空気とか本当に。

そしてそんな中で、その班員としまむらの会話で告げられる、第三者から見たしまむらと安達の姿がこの巻最高の切れ味。「人に興味がないように見えるけど、そんな人が一緒にいるんだからよっぽど気に入ってる」は言われたらその通りなんだけれど、あまりに感情がフラットなしまむらの一人称を読んできたもんだから、不意打ち気味に突き刺さるものがありました。

いやなんというか、それでもしまむらしまむらなんだけど、それはプロローグ&エピローグ的に挿入される未来の話でもそうなのだけど、やっぱりその認識は大きいと思うのです。冷静に自分が見えてるようで見えていないところに自覚が与えられた感じが、間違いなく何かが進んだ感じがして、やっぱり安達としまむらは最高だなって気持ちになる一冊でした。

アニメ化、この一人称で表現していく作品をというのは難しいと思うのだけど、とても楽しみです。