【小説感想】やがて君になる 佐伯沙弥香について 2 / 入間人間

 

 1巻は佐伯沙弥香が佐伯沙弥香になる過程を知る小学校から中学時代。そして2巻は、原作で侑と橙子の物語として読んできた高校時代。

最初の章が沙弥香の視点から侑が入学してから原作最新刊までを描くこともあり、とにかく私たちの知っている佐伯沙弥香がこの上なくクリアにここにあるという感じです。そしてそこから過去に遡り、1年時の沙弥香と橙子を描くにあたっても、その時期の話は当然知らないはずなのに、驚くほど違和感なく当たり前のように佐伯沙弥香なのが凄い。そうそう、沙弥香はこうだったよねと、まるで知っていたかのように思えるのは、原作から感じ取った高校時代の佐伯沙弥香というイメージから全くずれていないから。限りなく純度を高めた佐伯沙弥香の思考を、言動を、行動を、その概念をそのままお届けという一冊でした。

逆に言えば話的に何も新しいことはなくて、どこを切り取ってもとにかく解像度の高い佐伯沙弥香がいるだけの200ページという目眩のするような小説でもあり。人を選ぶ1冊だとは思うのですが、佐伯沙弥香というキャラクターに興味がある人は1巻と合わせて読むといいと思います。

そして3巻、大学時代、彼女の未来を、その行く先を待ちましょう。